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“Brother 生きていくだけだよ”
たどり着くまでに多くの感情や葛藤を通過しているからこそ、この言葉は深い意味を持つ。積み重なったその全ての感情の層が、最後に「ただ生きること」の尊さや価値を実感させてくれる。
怒りや不安のような負の感情も含めた人間の感情全体を包み込み、それを超えて「希望」へと繋げる力。
いまある絆と、「生きていくだけだよ」というメッセージが、私たちが抱える重圧や苦悩を少し軽くし、シンプルな希望を届けてくれる
Release:1999.07.14
表現される感情
F・E・A・R / 激怒
このアルバムのオープニングナンバーは、激しいギターリフからはじまるハードロック曲だ。
fearとは、恐れという意味だ。恐怖心は人間の本能としてある。ネガティブなものとして捉えがちだが、それは時として、自分の身を守るためには必要な感情だ。
この曲では、この恐れを、「打ち勝とう」とする感情ではなく、「利用するべき」感情として歌っている。
“そんなに怖いんなら そいつを利用してごらんなよ
なまくらの心臓に 恐怖の力で火を入れてみなよ
くさりかけの性根を 一気に爆発させちゃいなさい
まじりけのない燃料で血をグツグツ踊らせちゃいなさい”
もしも失敗したらどうしようとか、相手を怒らせてしまうのではないか、などそんな不安や恐れのイメージが頭をよぎっては動けなくなってしまう。だからこそ、その恐れから逆算して、では失敗しないためには、相手を怒らせないためにはという思考が生まれてくる。
“見きわめろ 見きわめろ 見きわめろ
相手は誰なんだろ? そしてどこにいるのか”
その恐怖をつくりだしている根本的な要因は何なのか。それを具体的にイメージして、血をグツグツと踊らせて、その要因を潰していく。それでも予期せぬことで、転ぶこともあるだろう。その姿を喜ぶ人間もいるだろう。
“あのスカした大向こうのやつらにすきなこと言わしてやれよ
あいつら人がコケるのを手ぐすねひいて待っているんだって
ヒマだから人の不幸で 笑いたくてしょうがないんだろ?”
その怒りのエネルギーを、前進するための起爆剤として、そんなやつらを尻目に先へと進んでいく。相手になんかしていられない。
“ちっちゃくプルプルふるえるくらいならあばれろよ
Dance with Fear
コメツブほどのプライドを ダイヤのように光らせて
Dance with Fear
yeah yeah yeah Dance with Fear”
この曲のサビでは、その恐れと手を取り、行動するべき道を示してくれる。
ギリギリchop (Version51) / 興奮状態
26th Singleのアルバムバージョン。1曲目に引き続き、ハードロックナンバー。
勝利を得るには、リスクを取る必要がある。リスクがあるからこそ、リターンがある。それは振り子のような関係で、その振れ幅が大きいほど、得られるものは大きいだろう。
傍から見れば、無謀な挑戦。しかし何もしないことも、またリスクなのだ。きっと何もしなかったことへの後悔が残る。
確実な勝算があるわけではない。だからといって無鉄砲というわけではない。そこには積み上げてきた経験によって得られた確かな自信がある。
全力疾走で駆け抜ける短距離ランナー のようなエネルギーが、興奮状態で歌われている。
“ギリギリ崖の上を行くように
フラフラしたっていいじゃないかよ
それでも前に行くしかないんだから
大丈夫 僕の場合は”
いまの状況が、なまぬるい温泉だと感じているなら、そこから出てみるのもいい。
前に進むしかない人生で、安定や安心だけが、その人生を豊かにしてくれるわけじゃない。
この曲は、挑戦することへの勇気をくれる。
Brotherhood / 希望に満ちた
このアルバムのタイトルナンバー。
この曲でのbrotherhoodは、共通の目標や理想をもつ人々の間の絆や連帯感、という意味をもっている。
「brotherhood」について、B’zの松本さんは「僕らの音楽を好きでいてくれる沢山のリスナー、その活動を支えてくれている多くのスタッフ、改めてみんなに感謝の気持ちが芽生えたとき、この言葉が生まれた」と語っている。
この曲では、日常のなかに確かにあるはずの絆について歌われている。
それは、どんな愚痴でもきいてくれるとか、何も言わないでも察してくれるとか、オンラインで繋がっているとか、SNSにいいねをくれるとか、そんな絆ではない。
大人になると、それぞれが、それぞれの道を進み始める。いつまでも昔と同じではいられない。多くの時間を費やしたり、いつでも近い距離にいることだけが、その絆を深めるわけじゃない。
たまに会って話をする。それだけのことでもいい。SNS映えするような綺麗な場所でなくったっていい。近所の居酒屋、友達の部屋、駐車場だって構わない。
“たまにはしょーもないハナシで 盛り上がろう
言いたいこと言えるから いつも最後は笑顔で別れられる”
そんな日常の一瞬。気を遣うこともなく、本音で語り合えれば、日々の疲れも癒やされていく。
“どこかであいつがベソかいて
どこかでおまえがブッ倒れて
どこかでボクがヤケになってる
味方がいないと叫んでいる
みんな生まれも育ちも違ってるし
ベッタリくっつくのは好きじゃない
いざという時 手を 差しのべれらるかどうかなんだ
だからなんとか ここまでやってこれたんだ
You know what I mean”
誰だって多くの悩みを抱え、その日々を戦っている。同じ道を進んでいるわけじゃない。普段はそれぞれの道を進みながら、それでも、いざという時にはその手を差しのべて助けあえる絆。
“Brother 生きていくだけだよ
ためらうことなど何もないよ 今更
走れなきゃ 歩けばいいんだよ
道は違っても ひとりきりじゃないんだ
Baby,we’ll be alright, we’ll be alright,
we’ll be alright, we’ll be alright, we’ll be alright”
人はひとりでは生きていけない。もうダメだと思う瞬間は、何度だってあるだろう。それでも、そのときに手を差し伸べてくれる人が、きっといるはずだ。
私たちはきっと大丈夫だと、稲葉さんの力強い歌声で、歌われるロックバラード。その希望に満ちたメッセージは、きっと私たちの生きていく道の先を光で照らしてくれている。
このアルバムのリリースから約12年後の2011年4月1日のミュージックステーションの放送でこの曲が、当時の新曲「さよなら傷だらけの日々よ」とともに、ライブ演奏されている。
この放送の直前の2011年3月11日、東日本大震災が起こっている。震災被害に加え、福島第一原子力発電所のメルトダウン発生。当時は、さまざまな情報が飛び交い、本当に混乱状態だった。放射能汚染の被害にかんしては、風評をあおるような大人の言動に、被災した地域から避難してきた人が、差別を受けることもあったそうだ。
そして多くの外国人も自国へと帰国していく。そんな状況のなか、サポートメンバーの、ドラムのシェーンさん、ベースのバリーさんが来日し、この日のライブ演奏に参加してくれている。
タモリさんに「brotherhood」の選曲理由をきかれた際に、稲葉さんはこう語っている。「曲としては99年にリリースした曲なんですけども、当時離れていても繋がっている仲間みたいなものをテーマに作りまして、いま歌わせていただけるんだったらこれだなということで選ばせていただきました。」
この日のライブ演奏は、大反響で、多くの人に感動と勇気を与えてくれた。
この曲は、聴く人に「生きていくだけだよ」というシンプルな希望をもたらしてくれる。
ながい愛 / 危惧する
ながいストリングスのイントロから始まる重めのロックナンバー。
新しいものへと気持ちが向いていく、そんな「あなた」を危惧する感情。
“もっとながい間
愛してくれませんでしょうか?
そういうものが今
僕らにゃいるんだ
なにもかも
すり減らしながら生きる
そんな時代はもう
終わろうとしている”
人、時間、資源、そして愛も、使い捨てる時代は終わろうとしている。みじかい愛を次から次へと、消費するばかりでは、きっと最後は幸せにはなれない。
世界はとんでもないスピードで進化を続け、どんな最先端のものでも、数年後にはあっという間に陳腐化してしまう。
けれども愛は、時間がたてばたつほど、きっとより深く、かけがえのないもになる。ながい愛の先にこそ、見つけられる幸せがあるはずだ。
この曲のサビの最後には、そんな切実な想いが歌われている。
“いつの日か
世界が消えてしまっても
瓦れきの中 輝く朝露のように
美しい気持ちだけを残したい
そんな気持ちを僕は
あなたに持ちたい”
夢のような日々 / 楽しい
リラックスした雰囲気が伝わってくる軽やかなナンバー。
オープニングの雑談は、ブースにいた松本さんとメンバーの会話を、コンソール室にいた稲葉さんが、こっそり録音したものだそう。楽しそうな皆さんの会話と、稲葉さんのイタズラ心に、きいているこちらも、ついニヤけてしまう。
この曲での夢のような日々とは、絵に描いたような理想的な人生を送るとか、そういったことではない。
健康であること、笑顔で迎えてくれる場所があること、そして、手の温もり。そんな「当たり前」と思いがちなことが実は何よりも貴重で、それが続いていくことが夢のような日々なのだ。
“悲しいのなぜ?
切ないのはなぜなの?”
ときには涙がこぼれることもある。上手くいくことばかりじゃない。その現実もしっかりと、受け止めたうえで、この曲のサビでは、人生の素晴らしさが歌われている。
“あんなこともこんなことも夢じゃないぜ
しっかりと目を開いてごらん
そしたら快感はお前の中ではじけるよ
素晴らしい!
Hey,hey!it’s a beautiful day
Hey,hey!it’s a wonderful day
Hey,hey!it’s a beautiful day
Hey,hey!it’s a wonderful day”
ちなみに余談だが、このサビのHey,hey!it’s a beautiful day〜の部分は、松本さんによって歌われている。ふだん歌うことのない松本さんがサビを歌うことで、この曲の楽しそうな雰囲気がより伝わってくる。
銀の翼で翔べ / 冷静
銀色は、外面的な派手さではなく、内面的な充実感をイメージさせ、自身のプライドを連想させる色だ。また、いぶし銀という言葉もある。これは、その優れた実績や経験、実力を表出さない謙虚な人に使われる。
そこには、金色のような華やかさはないかもしれない。それでも、その自立心には、銀色の翼が備わっている。
他責思考で、自分が認められない不満を、いつまでも愚痴ってばかりでは、羽ばたくことはできない。かといって、なんでもかんでも、自責思考で、自分を責めるわけじゃない。そんなことばかりしていても、羽ばたくことはできない。
“We’ve got the wing
銀色に光る翼広げ 僕と行きましょう
どこでも何かが起きている
知らないことを学ぶ根性あるかい
敗北感に悩んでるなら
全てを認めまた始めりゃいいだろう
分かってんだろ 本当はそばにいる
自分を待つ人がいるんだよ
銀色・自立の色・とってもsweet”
認めるべき敗北は認めて反省し、次の行動へと生かしていく。そして、自分は本当は誰に認められたいのか。自分を待ってくれている人をしっかりと見定め、その翼を広げ、羽ばたいていく。
この曲は、そんな成長と挑戦を応援してくれる。
その手で触れてごらん / もどかしい
その情の深さが、恨みといったマイナスな感情に転じてしまうことがある。
幻だけが大きくなっていき、もはや何が真実がわからなくなってしまう。
では、誰も信じなければいいのか。そんなことはない。必要なのは、その手で触れるということ。
悪いウワサ話に不安を煽られたり、都合の良い話に期待をさせられたり、誰かにコントロールされてばかりでは、いつか自分すらも見失ってしまう。
“I don’t know,you don’t know, no one knows 裏切られ
誰かのこと 憎たらしくなって
信じて 期待して すれちがって 傷ついたら
真実のつぼみに そっと手を出せ
幻に戸惑うな その手で触れてごらん”
この曲は、疑心暗鬼、被害妄想、そんなもどかしさを、振り払ってくれるだろう。
流れゆく日々 / つまらない
燃えるような日々が続いたあとに訪れる、何もない退屈な日々。
ただ流れゆく日々のつまらなさ。努力に見合っただけの結果は得られず、高く保っていたモチベーションは消える。
川は降りそそぐ日差しに輝いて流れている。その水面の輝きに、かつての日々を重ねる。
“僕たちは戦った
欲望も愛情もむきだして
果てしなく けわしい旅で
何をわかりあえたのだろう”
そんなことを自分に問いかけてみるが、 答えはでない。
“離れても 体の中 熱さが残り”
曲が終わりをむかえると思ったところで、松本さんの激しく感情的に弾かれるギターソロが鳴り響く。美しいメロディーではなく、荒々しいメロディーで、その「熱さ」を表現している。
この疲労感のような余韻の中に、静かに浸ってみるのもいい。
SKIN / 満ち足りている
ふたりの肌と肌をあわせて、抱き合いひとつになろうとする。セックスによる愛情が、表現されたナンバーだ。
“戻れないと分かっていても この心 止められない
振り返れば景色は遠ざかり もっと強く魂寄せあう”
もう戻れないという状況。その状況は、景色すら追いやってむしろより一層、お互いを引き寄せ合う。
“混ざりあいたい 絵の具のように
鮮やかな光を放ちながら
取り去ってしまおう 息を重ねあって
二人を分かつ境界線を”
その境界線とは何なのか。もう遊びではないという一線かもしれないし、なにか社会的な障壁かもしれないし、コンマ数ミリの物理的な隔たりかもしれない。
“溶けてしまおう 目を閉じないで
これ以上なにも失わないように
歓びで哀しみを包む覚悟をしよう
ためらわないで 進んでいける
夢の燃ゆる方へ”
その愛が満ち足りていく様子が、やさしく、ときに激しく歌われている。
イカせておくれ! / 精力的
このタイトルに負けないくらいのストレートで爽快なロックナンバーだ。
愛しい恋人に別れを告げ、なけなしのチャンスに挑戦する姿が精力的に歌われている。
“入る隙間もない社交界 手の届かないいい女
何でもいいからとっかかりが欲しいと
いつのまにかおめめがギラついている”
この社交界には、きっとさまざまな著名人や有力者がいるのだろう。さらには高嶺の花のような女性までいる。圧倒的アウェイの中、目をギラつかせて、かれらとの会話の糸口を探している。そんな若者の駆け出し感あふれるフレーズだ。
“苦労話を自慢げにしゃべらないで
そんなヒマがありゃ何かバイトでも始めよう”
余談だが、タレントの高田純次は、年寄りにありがちな「説教」「昔話」「自慢話」をしないようにしているとのこと(だからエロ話しかできないとのオチもある)。
そんな話より、「今」何をするか、「これから」どこへ向かうかに価値を置く姿勢が、勢いのある若者らしさを表現している。
“イカせておくれ もう辛抱できない
なけなしのチャンスを 試してもいいだろう
想像もつかないことを 一度でいいしてみたい
そろそろいいタイミングでしょう 正直になれ”
この曲は、いまを駆けている若者にも、そして大人になってしまった私たちにも、走り出すためのエネルギーを与えてくれる。
SHINE / 熱狂的
ガットギターのサウンドと手拍子。そして、オーレという掛け声。スペインのフラメンコとロックのミクスチャー。そのチャレンジ精神が表現された、アルバムのラストナンバー。
アルバムの曲順には、きっと意味があるだろう。この曲は「イカせておくれ」のその後が連想される、そんな歌詞となっている。
悔いなく輝こうとする、そんな熱狂的な感情が歌われたナンバーだ。
“晴れわたる空を眺め 今日も旅の途中
乾きかけの心を隠して 街を行こう”
このフレーズで表現される状況には、余裕のない孤独さがうかがえる。
“こみあげる 想いはいつも おんなじで
変わってゆく 風景の中におまえを見てしまう”
そんな孤独からか、そこにいるはずのない「おまえ」を風景の中に重ねてしまう。
“手ェ抜いて生きたら消えてゆく 脆くてはかない僕らを包む Shine
甘えたい気持ちが暴れだして 一人眠る夜はただつらい”
楽な道のりでないことは承知していたはずだ。ふと油断すれば、その輝きも消えてしまう。 どれだけ万全に未来を想定していても、絶対なんてものはない。 想像以上の孤独に、苦しむ夜が訪れる。
“最後の最後は一人ぼっち 胸の中にだけおまえがいる
どこにいようがかまいやしない 悔いなく輝けよ
So Shine”
あれだけ勢いよく飛び出したのにもかかわらず、その旅の途中では、一人ぼっちになる孤独。それでも胸の中にはおまえがいる。だからこそ輝けるし、そこには、はっきりとした絆も感じとれる。
きっと輝くためには、愛が、孤独が、後悔が、 恥が、希望が、絆が必要だ。
さまざまな経験をしてこそ、誰よりも強く光輝ける。すべての経験を、その輝きへと繋げていく。
失敗するなとか、成功しろとか、そんなことじゃない。 悔いなく輝けよ。それがこの曲のメッセージだ。
it’s a beautiful day
it’s a wonderful day