Image by PublicDomainPictures from Pixabay
“日々の不安や内面の葛藤を洗い流し、あなたの自分らしさを心地よく肯定していく”
アルバムタイトルの『CHUBBY GROOVE』は「豊かで肉厚なグルーヴ感」 を意味しており、まさにアルバム全体の核となるコンセプトが表現されている。
「CHUBBY(ぽっちゃり)」という言葉は、単に太っているというよりも、「親しみやすい」「かわいらしい」といったポジティブなニュアンスを含むことがあり、そこに「GROOVE」が組み合わさることで、単なる音楽のリズム以上に「心地よく、楽しく、自由なノリ」を表現している。
このアムバムタイトル通り、グルーヴ感のあるリズムと、ダンサブルなロックサウンドが全体を通して展開されており、まさに INABA / SALAS の音楽スタイルそのものを象徴している。
稲葉さんが、未知の音楽領域へ果敢に踏み出した記念すべき一枚。今回のコラボレーションは、彼の音楽的表現に新たな厚みと多層性をもたらした。
稲葉さんとSALASの共鳴し合うサウンドは、互いの個性を引き立てつつも、ひとつのまとまりとして力強い音楽体験を生み出している。これまでのソロ作品では味わえなかった、新たな音楽の可能性を感じさせる仕上がりとなっている。
各楽曲が放つ独自の色彩と情感が、一つの大きなグルーヴに集約されることで、リスナーは音楽の中に身を委ねると同時に、コラボレーションならではの新鮮な世界観を体感できる。
完璧でなければならないというプレッシャーや、他人との違いに対する不安、孤独感。そんな内面の重荷をかき消すように、このアルバムの太くリズミカルなグルーヴが生み出す一体感が「自分らしさ」を心地よく肯定する気分にさせてくれるだろう。
Release:2017.01.18

表現される感情
SAYONARA RIVER / 集中
心の奥に溜まった迷いや執着を振り払い、未来へと泳ぎ出す意志が表現されている。
流れる川を泳いでいくなか、まるで不要なものが自然と洗い流されていくようなイメージが浮かび上がってくる。
Salasのファンキーなギターによって刻まれるグルーヴ感のあるリズムと、華やかなシンセサイザーのサウンド、その流れに乗る稲葉さんのリズムを活かしたボーカル。それぞれの要素が上手く重なりあい、単に音楽のリズムやノリの良さだけではない、流れるような躍動感のある力強いグルーヴが生み出されている。
過去のしがらみにただ「さよなら」を告げるだけではなく、ポジティブで軽やかな前進していくためのエネルギーを感じさせてくれるファンク・ナンバーに仕上がっている。
まさにアルバムの幕開けにふさわしい1曲だ。
A〜Bメロでは、自分の意志で静かに新しいステージへと踏み出していく姿が描かれている。
かまわないよ全部放り投げてしまえよ
失いたくないものは何個あるの? Try
その声は届かないんだろ
皆寝てる間に川を渡れ tonight
「その声は届かないんだろ」というフレーズからは、もう言葉ではなく、行動で示すしかないという決意が感じられる。
人間関係において、自分の想いが相手に届かずに生じてしまうすれ違い。社会や世界に対して何かを訴えても、現実は変わらないという無力感。
一見ネガティブに思える「その声は届かないんだろ」というフレーズには、そのことを嘆くのではなく、そんな迷いは断ち切れというメッセージにもなっていると考えられる。
サビでは、今まで気づいていなかった真実や、新しい可能性に目を向ける視点が描かれている。
バイバイ 目を覚ましてごらん
無駄な傷はもういらない
バイバイ 泣き濡れた日々
未来はこの向こう側
サヨナライツノヒカ
サヨナラ it’s not too late
「サヨナラ」という言葉が、「未来へ進むための前向きなサヨナラ」 になっているのがポイントだろう。
今いる場所だけが全てではない。その川の向こうには、どこまでも新しい景色が広がっている。
新たな可能性があることに気づき、それを掴みにいくべきだというメッセージが伝えられている。それがいつだって、遅すぎることなんてないはずだ。
ブリッジパートでは、流されるのではなく、自分の選んだ道を自らの力で泳ぎきることの大切さが伝えられている。
雄風 バイバイ 泳ぎきってごらんよ
雄風 バイバイ どこにも流されないで
「雄風」という言葉には、「強く立派な風」 という意味がある。
「SAYONARA RIVER」の歌詞全体の文脈を考えると、この言葉は、強い風に背中を押されるような「追い風」を意味していると感じられる。
ただ「どこにも流されないで」というフレーズから、風が強すぎて流されそうになる「向かい風」を意味しているという解釈もあるだろう。
つまり、自分がどう向き合うか次第で、それが追い風にも逆風にもなるということを意味しているのだと思う。
いつまでも悲しみに浸っているわけにはいかない。この曲は「サヨナラ」という言葉が持つネガティブな印象を前向きなエネルギーに変え、新しい環境へ飛び込む勇気を与えてくれるだろう。
OVERDRIVE / 興奮状態
日々の葛藤や疲労を抱えながらも、迷いを振り切り、ブレーキも踏まずに駆け抜けていく。制限なしに走り続けるような爽快感あふれるファンクロック・ナンバー。
「OVERDRIVE」にはいくつかの意味があるが、この曲では、車のギアを高い段階に入れて、スピードを上げるという意味が強調されている。人生において迷わず突き進む姿勢を象徴しているのだろう。
アルバムのなかでも特にエネルギッシュな1曲。疾走感のあるギターサウンド、グルーヴィーなリズムセクションとエネルギッシュなボーカルが絡み合っている。
そんな荒々しさと洗練さが共存するロックサウンドは、自分もこのサウンドに乗ってどこまでも突き進んでいけるような気持ちにさせてくれる。
何かに迷ったり立ち止まりそうになったときに、この曲が背中を押してくれるはずだ。
A〜Bメロでは、日々の疲労や苦しさを嘆くだけでは終わらない、そんな前向きなエネルギーが感じられる。
毎日毎日割りに合わない疲労
全く この世は蟻地獄
それでも頭の中は高速で回ってら
案外嫌いじゃない
抜け出そうとしてもなかなか抜けられない苦しい状況。努力しても簡単には報われない現実。もがくほどに沈んでいくこともある。
そんな苦しい状況でも、停滞することなく、アイデアを巡らせ、頭の中は回転し続けている。
ある種の充実感や刺激、混沌とした状況さえもエネルギーに変えていく。
サビでは、どんな状況でも関係なく、自分のエネルギーを全開にして突き進む強い意志が感じられる。
天上かい? どん底なのかい?
スイッチはON I’m in overdrive
泥まみれでも踊り明かす
ブレイキはOFF I’m in overdrive
天国か地獄かなんて考えても仕方がない。もうどうにでもなれというような開き直りにも似た感覚が、疾走感あふれるサウンドと絡み合うことで、ポジティブなエネルギーとして響いてくる。
立ち止まって悩むのではなく、動きながら考え、進みながら答えを見つけるという姿勢が貫かれている。
時間は止まらない。どうせ止まれないなら、そのまま突っ切るしかない。そんな生き方への強い肯定感が、メッセージとして込められている。
ブリッジパートでは、強く心に刻まれた情景も燃料にして、さらに加速していく強さが描かれている。
覚えてるかい いつだったろう
海辺のベンチの上で
星を見て 波を聴いて
全てが完璧だったろう
過去の美しい瞬間が鮮明に浮かび上がる。このフレーズが伝えたいのは単なる郷愁ではなく、その記憶すらも今を突き進む原動力にすること。
「あのときは完璧だった」と思い出に浸って、いつまでもそこに留まってはいられない。その感覚を胸に刻みながら、止まらずに走り続けていく。
迷いを振り払い、アクセル全開で進みたいすべての人におすすめのナンバーだ。立ち止まってる場合じゃないという気持ちを鼓舞してくれるはずだ。
WABISABI / 意気消沈
日本独自の美意識「侘び寂び」が持つ不完全な美しさという側面を背景に、生きていくことの両面性ー快楽と苦悩、享楽と自罰、そんな因果応報の考えを、「詫び、錆」といった具体的な表現と独特な音楽性を通して表現しているファンクロック・ナンバー。
ヘビーなベースラインとシンプルで抑制されたドラム。この組み合わせが、楽曲全体にどっしりとした安定感をもたらし、どこかミステリアスで深みのある雰囲気を作り出している。
その上に重なるSalasの軽快なギターカッティング、稲葉さんの遊び心あふれるボーカル、そしてサウンドの隙間を埋めるように入るサウンドエフェクトが絶妙なコントラストを生み出し、独特な浮遊感や緊張感を感じることができる。
過度な装飾を排除したシンプルなアレンジが、逆にグルーヴの深みを強調し、『CHUBBY GROOVE』の中でも不思議な魅力を放つ存在となっている。
Aメロでは、恋愛の複雑な状況に自ら足を踏み入れてしまった衝動と、一時的な快楽に対する無防備さが描かれている。
モテちまったのがまず間違い
考える間も無く溺れちまい
恋の渦に身をまかせます
そんな空気 そんな空気
そんな空気でそれは始まる
楽しい瞬間や快楽が、必ずしも良い結果だけをもたらすわけではない。それでも人は、その快楽の周囲に漂う特別なムードや雰囲気に溺れ、引き込まれていく。
衝動的で、理性を置き去りにしたまま恋の流れに身を任せてしまう、その一瞬の心の動きが強調されている。
Bメロでは、楽しい時間が儚く、必ず終わりが来るという切なさや、現実への認識が表現されている。
楽しい時はいつまでも
続かないと知っていても
その裏に潜む避けがたい出来事への予感を感じ取っていながらも、目の前の快楽に抗えずに身を任せていく。
一時の幸福感と切なさを内包した主人公の心情が描かれている。
サビでは、自己の軽率な行動に対する反省と、その結果として生じる痛みを表現している。
羽目を外して滑って転んで
痛い目にあうのさ
詫びて詫びてさ頭下げて
じっと耐えるしかない
身から出た錆…
自分の行動が原因で困難に陥るという現実と、謝罪をし耐えるしかないという自己責任の厳しさ。
それでも「身から出た錆…」というフレーズでは、稲葉さんの少しユーモラスな歌い方も相まって、ただ重く沈むだけではなく、人生の一つの教訓として、あまり深刻になりすぎずに、そんな状況を受け入れる余地も感じらる。
ブリッジパートでは、ある過ちや不正に対して、集団が正当な罰を求める声を上げる様子をシニカルに描写している。
聞こえるよ歓声
然るべき制裁
与えなさいと叫んでる喚いてる
祭りのように華やいでる
「歓声」や「祭り」という本来ポジティブな言葉を使うことで、制裁を求める人々の異様な熱狂を皮肉的に表現している。それ自体がエンターテイメント化しているような異様な雰囲気。
いずれは自分がその立場に立たされることになるかもしれない。そんな人間社会全体の因果の巡りをも風刺しているように感じられる。
稲葉さんの力強い歌声とシャウトが、本当に熱狂の渦の中にいるかのような臨場感を生み出している。
快楽と責任、互いに影響し合う因果の循環、その苦境を忍耐強く受け入れる姿勢。
人生での失敗や挫折、または周囲からの批判、そんな苦い経験を、重苦しく感じさせることなく、ファンクの持つ明るさや遊び心を背景に、多くの人々の心に響く前向きなメッセージとして届けてくれている。
AISHI-AISARE / 有頂天
遠ざかってしまった憧憬をもう一度取り戻そうとする情熱と、ストレートな愛情を伝えてくれるファンクロック・ナンバー。
心の奥にある、大切な愛情へと手を伸ばす。それは、単なる抽象的な愛ではなく、実感に基づいた「感触」をともなう確かな愛情だ。
イントロから全編にわたって刻まれるシンセサイザーのサウンドが、力強いドラムのリズムに、ファンク要素を加え、ダンサブルで躍動感あるグルーブを作り出している。
一方サビでは、そのグルーヴ感の土台に、空間的な広がりを感じさせるクリーンなギター、流れるような滑らかなメロディラインのボーカルが重なることで、心に染み入るような浮遊感を感じさせてくれる。
全体として非常に緻密でバランスの取れたサウンドデザインが実現されている。
Aメロでは、際限なく溢れ出す感情が、ときにコントロールを失う状況が描かれている。
君と僕 さだめの二人
喜怒哀楽とか天井シラズ
たまにキズ 言葉が暴走して
取り返しがつかなくなる
深い愛情や信頼で結ばれた関係でも、感情の高ぶりが、二人の関係に深い亀裂や痛みをもたらすことがある。
言葉は、深い愛情を伝える手段であると同時に、相手を深く傷つけてしまうという結果をもたらしてしまうこともある。
それでもサビでは、「君」への絶対的な愛情と、その存在が自分のすべてを支えているという信念が表現されている。
他に好きなものなどない
君がいれば全てオーライ
どうかいつまでにここにいてほしい
自分勝手ならごめんなさい
無我夢中で取り戻したい
春の陽のように優しい感触
ただ「そばにいてほしい」という願いだけでなく、自己反省と理想の愛情への渇望が、透明感あるサウンドを通じて伝えられることで、その愛情の「感触」をまるで実際に感じるかのような体験を得ることができる。
ポストコーラスでは、愛の存在が生と死のすべてを包み込む普遍的な力であることを強調している。
愛し愛され生き 愛し愛され死ぬ
愛し愛され生き 愛し愛され死ぬ
すべての瞬間が愛の中で完結していく。
「愛し愛され」という表現が繰り返されることで、愛すること、そして愛されることの重要性を、死ぬというシンプルかつ強烈なメッセージで締めくくっている。
ブリッジパートでは、理想的な愛情と、その裏に潜む儚さや悲しみを同時に表現している。
誰にもマネできない関係
誰にも壊させない関係
痛いほどわかってるんだよ
何が一番悲しいのか
日常の中で生じる小さな亀裂や、愛情が失われたときに感じる深い悲しみは、これまでの経験と反省を通じて心に刻まれる。そうした痛みや失望を理解しているからこそ、「君」への愛情は単なる幻想や理想ではなく、より具体的でリアルな「感触」をともなうものとなる。
ロマンチックな願望を超えて、人間の存在そのものを規定するリアリティ。人生のすべての局面で愛情が支配的な存在であるという、厳しくも美しい現実を映し出している。
リスナーにとって自分自身の生き方や愛の在り方を見つめ直すきっかけとなるメッセージを届けてくれるだろう。
シラセ / 思いにふける
シンプルなサウンドと最小限の言葉を用いながら、日常の中にある小さな発見や感情をとても繊細に表現しているバラード。
こうしたミニマルなアプローチによって生まれる余韻。リスナーが自身の日常や感情を照らし合わせ、自由に解釈できる世界観が魅力となっている。
シンプルでありながら深みのあるこの曲は、日常の一瞬の美しさを引き出し「今ここにあるもの」を大切に感じることの意味を問いかけている。
Aメロでは、普段は見逃しがちな微細な変化に心を傾ける瞬間が表現されている。
陽は昇り 何もない朝
風が吹いて 何か囁いた
何もない静かな朝にある、普段は見過ごしがちな一瞬の空白。
「風が吹いて 何か囁いた」というフレーズでは、自身の内面や心の奥底に働きかけ、普段は気づかない感情や思考を呼び起こす瞬間が表現されている。
Bメロでは、言葉では説明できずとも、確かに存在する温かさや安心感を感じ取っている、そんな心の奥深い部分の動きを表現している。
なぜだろ 感じてる
あなたのぬくもりを
日常の中の何気ない瞬間に隠された深い愛情と「あなた」との特別な繋がりが感じられる。
サビでは、日常の中に潜む儚い美しさと、すぐに消えてしまうかもしれない感情の儚さがたった一言で表現されている。
これは淡い夢なの?
理屈では説明できないほど純粋で、自然な愛情。
シンプルなサウンドに包まれながらも、稲葉さんのボーカルは、その透明感と深みでリスナーの感情に直接語りかける。
声の微妙なニュアンスが、内面の揺れや小さな感情の動きを鮮明に映し出し、言葉以上の情景や情感を生み出している。
日常の喧騒から離れた静かな時間を与えてくれるこの曲は、リスナー自身の経験や想いと自然と重り合い、独自の感動を届けてくれるだろう。
ERROR MESSAGE / 冷静
心の不完全さ、摩耗、そしてそれによって生じる小さな誤解やズレ。
人間の感情や関係性は予測不能で、思い通りにはならない。そのズレが一定の限界を超えたときに抱く「何かが違う」という違和感に対し、まるでシステムの不具合のように心に通知される「ERROR MESSAGE」。
日常の中で感じる不調和やもどかしさ、複雑な状況に戸惑いながらも、シンプルな幸せへの静かな願望が歌われている。
自分自身や周囲の不完全さを受け入れる中で、見過ごしがちな小さな幸せにあらためて気づかせてくれる。
ベースのスラップ奏法によるアタックが、曲全体に力強い躍動感を与え、サウンドに厚みとエネルギーをプラスしているのが印象的なナンバーだ。
Aメロでは、日常なかで無意識のうちに少しずつ変わっていく心の状態が描かれている。
時間が経つにつれ
すり減る部品のように
微妙に形を変えた
心が誤差を生み出す
無数の小さなストレスや失望。一つ一つは些細なものでも、積み重なることで、精神的な疲労が蓄積され、次第に心は消耗していく。
Bメロでは、現代社会における日々のストレスやプレッシャー、絶えず変動する環境の中で生きる、人々の心の余裕のなさが表現されている。
思い通りの答えじゃなきゃ
不機嫌なフェイス
みなさん余裕がない
理想や期待に縛られ、どんな小さな誤差も許さない状態は、結局は人間関係や日常の中で摩擦や不和を生む原因となり、またその不機嫌さがさらなるコミュニケーションのズレを生む悪循環に陥っていく。
サビでは、シンプルで純粋な願いが表現されている。
ぎゅっと抱きあって
笑っていたいだけ
本当は鮮やかな
花のように単純な願いなんですよ
花は儚く、その美しさは一瞬でも人々に感動を与える。
「花のように単純な願い」というフレーズには、きっと、一瞬の輝きや温もりを大切にすることで、本当の幸福に気づけるという希望が込められているのだろう。大切な人と寄り添い、笑い合いたいというシンプルな幸せの尊さを際立たせている。
この曲は、誰もが経験する、小さなズレや摩耗、期待と現実のギャップ。人間関係や仕事、生活の中で「エラー」を感じる瞬間に、小さな希望や温もりを届けてくれるだろう。
NISHI-HIGASHI / 気楽
固定された一方向ではなく、あらゆる可能性を受け入れ、新たな道を切り拓いていくという方向性が象徴されたタイトル。
前進し続ける勇気と、心の拠り所を見失わないバランスを保ちながら、停滞を打破していく。
そんな前向きなエネルギーが明るく開放的なサウンドで彩られ、ストレスや倦怠感を吹き飛ばしてくれそうなポップファンク・ナンバーに仕上がっている。
2番のAメロでは、日々、自分自身を積極的に刺激し、心身を常に活性化しておかなければという危機感が表現されている。
夜毎マメに刺激しないと
狭まりゆく心身の可動域
取るに足らない雑菌にさえも
やられてしまうような俺は嫌だ
閉塞感や停滞感は、ほんの些細な悪影響ですら、致命傷になってしまうほど、容易に心身を衰えさせてしまう。
2番のBメロでは、ささいな不安や心配事が次第に増えていく現実が表現されている。
気がかりな事ばかりが
日増しに増えてゆくけど
日常の不安と内面の葛藤を抱えながらも、そうしたプレッシャーに押しつぶされることなく、未来に向かって歩んでいかなければならない。
柔軟な心と体のためには、意識的に自分を動かす努力が必要なのだろう。
2番のサビでは、未来に対する不安や未知のリスクを認識しながらも、積極的に前進していく主人公の姿が描かれている。
ニシヒガシ キタミナミへ
闇の向こう誰が待つ
ニシヒガシ キタミナミへ
ああ、されど振り返ることはない
四方八方へ進むような表現は、固定概念にとらわれず、多様な価値観、未知の世界へ果敢に挑む姿勢を示唆しているのだろう。
外界だけでなく内面の成長や変化も含めた全方位への展開。自己の枠を超えて先にある新たな発見への期待感が感じられる。
「されど振り返ることはない」というフレーズは、過去や迷いにとらわれない強い意志が表現されている。
ブリッジパートでは、前進していくさなかに、自分のルーツや心の安らぎを感じる場所を、ふと再確認する瞬間の儚さや切なさが表現されている。
帰りたい場所があるってことに
気がついてしまうこともあるだろう
「気がついてしまう」という表現から、それが意図してしない瞬間だということがわかる。忙しい日常の中でふと感じる後ろ髪を引かれるような感覚。
誰もが「未知の領域」への憧れと「帰りたい場所」への温もりというを二面性抱えながら生きている。
成長や冒険に満ちた日常の輝きを伝えてくれるこの曲は、日常に新鮮なエネルギーを取り入れていくという前向きな気持ちをきっと引き出してくれるだろう。
苦悩の果てのそれも答えのひとつ / もどかしい
自分自身の弱さや迷いもまた、長い苦悩の中で見出された一つの「答え」であり、否応なく受け入れるべき現実だというメッセージが、ストレートなサウンドで表現されたロック・ナンバー。
全編を通して、クラップ音によって刻まれるリズムはライブ感を高め、楽曲に「生」のエネルギーをもたらしている。
Aメロでは、ある対象や理想に対して全力で向かおうとする熱意がない厳しい現実を痛感する瞬間が表現されている。
死んでも手に入れたい
そんなものないんだな
残念だけどこの頃
つくづくそう思うよ
理想と現実の間にある大きな隔たり。現実の中で見出される自己のあり方、受け入れるべき現実を問いかけている。
「残念だけど」というフレーズからは、一時的な感情ではなく、長い時間をかけて気づいたこと、あるいは何度も考えた末に行き着いた実感であることがうかがえる。
サビでは、理想的な潔さや大胆さが存在しない現実を受け入れることも、苦しみの中で見出したひとつの答えだと表現されている。
愛を捨てる潔さがない?
会いに行く大胆さもない?
弱虫でしょうか?
苦悩の果てのそれも答えのひとつ
「弱虫でしょうか?」という問いかけは、自己の弱さをただ嘆くのではなく、冷静に自分を見つめ直し、内面的な強さをも認識するきっかけにもなっている。
表面的な、決断力や行動力の不足と感じられる現実の裏側に、内省と熟考を経てたどり着く「答え」が、実は深い輝きを持っている可能性を示唆している。
自分なりのペースで、誠実に、自分自身と向き合いながら生み出された「答え」は、単なる行動の有無では測れないはずだ。
誰もが持つ弱さや不完全さに対し、外部の評価ではなく、自分自身で答えを導き出すことの大切さを、リスナーに問いかけている。
「正解」を自分自身で作り出していく。そのプロセスに寄り添い、最初の一歩を踏み出すきっかけを与えてくれる希望的なナンバーだ。
MARIE / 愛情のある
ストレートな表現で「マリー」への期待感や愛情を力強く伝えながら、爽快なサウンドが心地よく響く、疾走感あふれるロックナンバー。
官能的な愛情や抑えきれない期待感が交錯しながら、彼女の抗えない魅力に引き込まれていく。そして、その魅力に身を委ねることで、新しい世界が開かれていく。
そんな予感に対する高揚感が鮮明に表現されている。
2番のA〜Bメロでは、過剰な期待をしないようにと自身に言い聞かせる主人公の心情が表現されている。
何事にも 期待しすぎはダメと
今までの人生で
嫌ってほど 学んできたつもり
特別なことなんてないのだと
思い聞かせよう
ただそう考えること自体が、その思考の裏側にある、相手への深い愛情や、期待を抑えらえない気持ちの表れと言えるだろう。
サビでは、自分が主導権を握るのではなく、抗えない魅力に身を委ね、自分自身を解放することで未知の世界や新しい自分への扉を開く瞬間が表現されている。
もてあそんでおくれ ねぇマリー
その乳房の上で
目がさめるような囁き
遥か南から ねぇマリー
はるばる旅してきた
いたぶり好きの女王様マリー
ここでの「乳房」という言葉は、官能的な象徴としてだけでなく、安心感や包容力、さらには母性的なエネルギーをも連想させる。
完全な降伏と甘美な支配。主人公の価値観や人生観を揺さぶるような存在感。その魅力に翻弄され、虜になっていく。
そんな主人公の心情が余すところなく率直に表現されている。
ポストコーラスでは、静かな期待感や不安とともに、近い将来に起こるであろう変化への胸の高鳴りが表現されている。
予感がしてた
何かが起こりそうな
予感がしてた
何かが変わりそうな
心の奥底で何か大きな出来事や変化が訪れるだろうという直感は、時に言葉や論理を超えて、変化や新たな出会いへの扉を開く鍵となる。
この曲は、自分の内面をありのままにさらけ出すことで、普段隠してしまいがちな本当の自分を解放する力を感じさせてくれる。
理性や社会に縛られることなく、自分の弱さや欲望を素直に受け入れる解放感を、聴く人の心にもたらしてくれるだろう。
BLINK / 張り詰めた
内面の苦悩や孤独、そして絶望感。理想や夢だけではなく、現実に根ざした苦しみや不安の存在。
この曲が投げかけるのは、その中から見いだされる自分の人生という唯一無二のストーリーを紡ぎ出していく意志だ。
「BLINK」には、瞬きや点滅といった意味がある。このタイトルは、時間の儚さと刹那的な瞬間を象徴しているのだと思う。また今感じている闇もまた、永遠ではなく一瞬のうちに変わりうるものであるという希望を内包しているようにも感じられる。
大切なのは、どんな瞬間も自分自身の物語を形成していく大切な要素となるということだ。それらをどう意味づけ、具体的な物語として表現するのか。それが、その人にしかない物語の一部として価値を持ち、未来へと繋がっていく。
絶望と希望という相反する感情が混ざり合いながらも、最終的には自分だけのストーリーを紡ぎ出していく姿が、エモーショナルなサウンドで力強く表現されたロック・バラード。
Aメロでは、内面の葛藤や自己破壊的な衝動が描かれている。
いけない一歩踏み出し
どこまでも堕ちゆく
そんな姿思い浮かべ
眩しい夜 歩道に立つ
禁断や危険、もしくは後戻りできない道。最初の一歩を踏み出してしまえば、連鎖的に悪化していくプロセスや、内面の闇に引き込まれていってしまうかもしれない。
その一歩を踏み出した結果どう変わってしまうのか。目の前には眩しく輝く夜の景色が広がり、内面では、孤独や破滅の感情が渦巻いている。
その光と闇のコントラストが、心の奥に潜む葛藤や儚さを鮮明に浮かび上がらせている。
Bメロでは、独特の雰囲気や感情を呼び起こす抽象的な表現がなされている。
無音で過ぎる車
車が無音で過ぎ去る様子は、過ぎ去る一瞬や、気づかぬうちに流れていく時間の無情さを暗示しているのだろうか。
何か大切なものや変化が、気づかぬうちに過ぎ去ってしまう切なさを感じさせる。
サビでは、生きることへの痛みを率直に表現しながらも、自分だけの人生を肯定していこうとする意志が感じられる。
赤い灯が繰り返し点滅する
ここから足を踏み出してよいものか
生きるのは痛い
それでもこれは私だけのストーリー
今ある現状から飛び出すことへの不安や、未知の未来に対する躊躇。赤い灯の点滅は、避けがたい現実や、心の中に潜む不安・葛藤を暗示しているのだろう。
しかし、どれだけの困難や痛みがあっても、それでも生きていくという覚悟が表現されている。
最後のサビでは、厳しい現実と向き合いながらも、自分自身の生き方を受け入れ、前に進む決意が表現されている。
赤い灯が容赦なく点滅する
あるはずの道を誰か照らして下さい
生きてくのは辛い
それでもこれは私だけのストーリー
一度きりの私だけのストーリー
闇に向かっても踏み出して行くしかない
「あるはずの道」という一言には、絶望や迷いの中にあっても、どこかに確かな方向性や希望が必ず存在するという信念が込められている。
また「闇に向かっても」という言葉は、ただ理想を掲げるだけでなく、実際に感じる苦悩や絶望に対峙しながらも前へ進むという現実の厳しさを受け入れた決意を、より鮮明に表現している。
希望が、誰かに期待をすることが、必ずしも必要なわけではない。生きていくため、ときには、そういう望みを捨てなくてはいけない瞬間があるだろう。何もぜず、状況が自然に良くなることは、ほとんどない。
この曲は、そこに希望なんてなくとも、自分の力で歩み出す力を聴く人に与えてくれるだろう。
MY HEART YOUR HEART / 至福
アルバム『CHUBBY GROOVE』の中でも、とくに心に染み入るバラード。
そっと語りかけるような柔らかく優しい稲葉さんのボーカル。そして温かみのあるギターサウンドや壮大なストリングスが背景を彩ることで、楽曲全体に深い情感と温もりをもたらしている。
特筆すべきは、曲中に取り入れられた心拍音の存在だろう。これは単なるリズム音に留まらず、タイトルが示す「My heart Your heart」というテーマー2つの心が重なり合う瞬間ーを象徴している。
変わりゆく世界の中での無常感と、その中でも絶えず輝く温かい絆が描かれている。静かな時間と共に流れる情景は、聴く人の人生の様々な瞬間に共鳴し、心に寄り添ってくれる。
そんな魅力溢れる珠玉のバラードだ。
Aメロでは、穏やかで親密な時間の流れが詩的に表現されている。
なびいている髪に触れる
あなたは目を閉じたまま
鼓動そっと時間に寄り添う
ゆっくり指を動かせば
目を閉じ内面に集中し、感覚や感情に身を委ねていく。そんな心地よいリラックス状態のなか、自分の心拍が静かに、そして自然に、時の流れに寄り添い、一体となっていく。
そんな温かくも、繊細な情景が描かれている。
サビでは、すべてが絶えず変化していく現実と、それに逆らうことができない運命が表現されている。
変わってゆく なにもかもが
止められない 流れの中に
稲葉さんの温かみのある力強い歌声は、それでも消えることのない想いと希望を感じさせてくれる。
言葉以上に、変わりゆく現実の中でも消えることのない温かい想いが伝わってくる。
ポストコーラスでは、2つの心が重なり合い、一体となる瞬間が静かに、しかし確かな説得力をもって表現されている。
My heart Your heart
My heart Your heart
言葉に頼らなくても、シンプルなフレーズが持つ余韻とリズムが、聴く人それぞれの心に直接響き、深い感情の共鳴を生み出しているのだと感じさせてくれる。
変わりゆく世界の中で、人と人との心のつながる瞬間の温もりを静かに、力強く、聴く人の心に届けてくれるはずだ。
TROPHY / お祭り気分
アルバム『CHUBBY GROOVE』を締めくくるラストトラックとして、力強いメッセージとエネルギーに満ち溢れたロックナンバー。
トロフィーは成功や賞賛の象徴だ。それを手にするためにはそれは、ただ勝利を収めればいいのだろうか。きっとそうではない。
外部からの評価や勝敗に影響されることのなく、時が経っても色褪せない、他のどんなものとも比較出来ない価値を持つ本物のトロフィー。
それは、そのままの自分で走り出し、結果や小さな挫折にとらわれずに、自分の信じる道を突き進む努力と情熱によって手にすることができる。
この曲はきっと、自己肯定感を高め、一歩一歩着実に前進していく原動力を、聴く人に与えてくれるだろう。
Aメロでは、本来の自分らしさで躊躇せず前進するとこの大切さを伝えている。
頑なさが自分を苦しめる
キミは何年も前から気づいているが
頑なじゃないそんなのキミじゃない
だからもう迷うことなどないと知れ 走れ
単に柔軟であればいいというわけではない。固定観念に囚われた自分自身を否定し、本来の自分らしさ—自由で自然な状態—を肯定するメッセージが込められている。
サビでは、「負けたくない」という気持ちも自分のエネルギーに変え、前へ突き進む強さを表現している。
負けるのキライ?
それでいいんじゃない
1.2.3.4 いまそびえ立つ金字塔
その気持ちが、最終的には自分自身で築き上げる偉大な成果へと繋がっていく。
ブリッジパートでは、物理的なトロフィーを超え、精神的な面での価値や誇りを表現している。
できればお願い 錆び付かないトロフィー
どんな勝利も 寄せ付けないようなトロフィー
ここで語られる「トロフィー」は、誰かよりも優れているという競争の結果ではない。自分が本当に誇りに思える瞬間、つまり自分自身の価値や理想と照らし合わせたときにのみ得られる成果だ。
他人に勝つためではなく、自分自身に勝つための挑戦こそが、本当の意味での成功へとつながるというメッセージを込めているのだろう。
ポストコーラスでは、周囲に流されず、自分の信じた道をぶれずに進んでいくべきだという、シンプルながらも力強い励ましのメッセージが伝えられている。
それでいいんじゃない
そのままいけばいい
汗などぬぐうなよ
それでいいんじゃない
そのままいけばいい
努力の証である汗を恥じたり、気にしすぎる必要はない。
それでも、自分をそのまま受け入れるというのは、簡単なことではない。「他人にどう思われるか」ではなく、「自分はどうありたいか」を軸に生きるのは、ときに孤独や不安を伴うだろう。それでも、その勇気を持って一歩踏み出したとき、自分自身にしか手に入れられない「トロフィー」が、僕たちを待っているはずだ。
“My heart Your heart”
