幸せ

稲葉浩志 4th Album「Hadou」-さまざまな感情が持つエネルギーの波動-

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“言葉だけでは完全に表現しきれない感情が、それでも確かに存在し、相手に届いていく”

稲葉浩志の歌声や歌詞、サウンドが生み出す“波動”。

彼の内面から放たれるエネルギーや感情が、音楽を通じて、聴く人の心に波紋のように広がり、共鳴し、さまざまな感情を揺さぶる。

私たちが抱く、言葉だけでは伝えきれない感情の輪郭を、その歌声と多彩なサウンドでより鮮明に表現されている。

聴く人の人生や感情とリンクし、心を解放する“波動”を届けてくれる。

Release:2010.08.18

稲葉浩志「Hadou」
created by Rinker

LOST / そわそわする

オープニングを飾るこの曲は、主人公の孤独を表現するかのように、静かで、余韻のあるギターの音が物語の一部として響く。そしてそこに控えめに、鼓動のようなリズムが加わったミニマルなサウンドが特徴のバラードだ。

一人きりで立ち尽くす様子や、周囲の喧騒とは対照的に感じられる静けさを視覚的に想像させ、その孤独の中で感じられる「感情の揺らぎ」や「何かを求める気持ち」を繊細に表現している。

人生の中で「何か」を探し続けている人々の感情に触れるこの曲は、それが愛情であれ、希望であれ、人生の目的であれ、自分が何を求めているのかを模索する過程に寄り添い、深い共感をもってリスナーを包み込んでくれるだろう。

君の声が 急に響く 退屈な街角
賑わう通り 立ちつくし ひとりそわそわする

ああ… 会いにゆこう
ああ… そこはどこなの

誰ひとり 待ってはいない
それを 知っていても
大事なこと 感じてみたい
だから 行ってみよう

「君の声が 急に響く」という表現は、それが期待感とも戸惑いとも取れる複雑な感情を生み出している。

「退屈な街角」と「賑わう通り」という対比が、主人公の孤独感を演出し、「ひとりそわそわする」という描写が、その孤独のなかで行動を起こそうとする直前の主人公の緊張感を伝えている。

そして「ああ…」と歌う稲葉さんの声は、シンプルなサウンドの余白を埋めるように響き渡っている。ギターの静かな音色と控えめなリズムのなかに、この歌声が広がっていくことで、楽曲全体が持つミニマルな構成が逆に力強い感情の波を生み出ている。

この音の響きは、主人公の心の声そのものとして機能しており、孤独の中に存在する希望や躊躇いを、聴く人の心に直接届けている。

そして「大事なこと 感じてみたい」というフレーズは、この旅の目的を象徴しており、たとえその旅路の先に誰も待っていなくとも、自分にとって意義のある体験を求めていくという決意を感じさせる。

「大事なこと」というフレーズは、具体的な対象を明言しないことで、解釈の余地を残している。それによりリスナーは、自分自身にとっての「大事なこと」をそこに重ね合わせることができる。

孤独や不安、そしてそれを超えていく探求心や希望が織り交ざる一瞬の心のドラマが、鮮明に描かれている。

静かで深い感情の流れにのせて、「Hadou」の世界観へとリスナーを引き込んでいく。

絶対(的) / 集中

キミへの揺るぎない愛情と情熱が、ストレートなロックサウンドと爽快なメロディーで表現されている。そのシンプルで力強いメッセージが、リスナーの前向きな気持ちを引き出してくれる。

また稲葉さんの力強いボーカルは、自分の気持ちに正直でいることの大切さと解放感を感じさせてくれる。

A〜Bメロでは、キミを想う気持ちが、悪天候や周囲の騒音などの障害を超えて、まっすぐに突き進んでいく様子が鮮烈に描かれている。その集中力は、まるで全てのエネルギーを「サンクチュアリ」に向けて一点に集約しているかのようだ。

注意報を聴きながら 嵐の予感を胸に
サンクチュアリめざす夜 ワイパーの動きさえも止まって見える

激しいクラクションにも かきけされることない
ゆるぎない欲望の勝利なの?

「サンクチュアリ」は、宗教的な概念としては安全で神聖な場所を指す言葉だが、この曲の文脈においては、より抽象的に「揺るぎない目的地」「絶対的な価値」といったものを象徴しているのだろう。

それでも、突き進む主人公の胸には「ゆるぎない欲望の勝利なの?」という疑問が生まれている。

それは自身の欲望を正当化することへの抵抗感や葛藤なのだろうか。あるいは、その欲望が、揺らぎを超えて「絶対」に到達したのかと自身に問いかけているのだろうか。

完璧ではない「リアルな存在」として主人公の姿が描かれることで、リスナーは物語の中に自分を投影しやすくなっている。

サビでは、主人公が抱く愛情の純粋さと揺るぎなさ、そしてその愛が他の何にも代えがたい特別なものであることが歌われている。

大好きだって言われたい
そのためだけに生きてるみたい
見えなくなっても その声は聞こえてる
愛かどうかなんて もうたくさん
語れば語るほどに うそっぽい
誰とも比べない
キミという人だけが絶対

「大好き」という言葉に、自分の存在意義や人生の価値を託す。そんなシンプルな生きる原動力。

愛を説明することや他者と比較することを拒絶し、自分の中で感じる純粋な感覚が人生の核となる。

それは「絶対」の信念だろう。ただこの曲のタイトルにあえて「(的)」という括弧付きの曖昧さを加えることで、主人公が抱く愛情の中にある微かな迷いや、自己認識に対する疑問が反映されている。

どれほど強く信じていても、価値観や感情は時間や状況によって変化していく。

たとえこの世に普遍的な「絶対」が存在しなくても、それを信じ、追求し、自分の中で「絶対的な存在」を見出そうとする姿勢。その揺らぎと信念が、不完全さを抱えたままでも進むことの価値に気づかせてくれる。

The Morning Call / 生き生きとした

「The Morning Call」というタイトルには、一日の始まりを共有したい、まず最初にこの声を届けたいという純粋な願いが込められている。

この曲では、その願いや心の震えが、距離や時間を超えて「波動」として広がっていく様子が描かれている。

何もかもが、写真やメッセージで気軽にシェアできるわけじゃない。話しをすることで、その瞬間に感じた心の震えや息遣い、感情の高まりなど細かな空気感が相手に伝わる。

この曲は、相手とつながりたいという純粋な願いの大切さ、そんな感情の価値に気づかせてくれるだろう。

ストレートなロックサウンドを背景に、日常の中に宿る特別な瞬間を鮮明に、力強く表現しているナンバーだ。

A〜Bメロでは、自然の美しさや荘厳さに触れ、主人公の心が揺さぶられ、感情が込み上げてくる姿が描かれている。

朝もやを切りさくように 黄金色に海が輝いたよ

神さまでもいそうな 気配がして思わず 電話したくなった

まるで神の存在を感じさせるほど圧倒的な神秘性。その美しい景色が、内面の感情を引き出し、大切な人とこの感動を共有したいと思う瞬間を作り出す。

自分の中に留めておけないほどの感動が溢れ出す瞬間の感情が「電話したくなった」というフレーズにより表現されることで、生活に直結したリアリティを持って響いてくる。

サビでは、儚さと確かさが同時に存在するその感情が、まるで「波動」のように心の中で絶えず動き続けていく様子が描かれている。

とぎれそうで とぎれない 神秘の波動
何見ても 最初に知らせたいのは いつだってきみ
消えそうで 消えないあの声を
さがしてしまうのは悪い癖
どこにいても とめられない

生きているように、脈打ち、呼吸し、変化し続ける感情。どんなときも、あらゆる瞬間において「きみ」の存在が自分の思考や感情の中心にある。

「きみ」が自分にとってかけがえのない存在であること、そしてその「きみ」とのつながりをさらに強くしたいという純粋な願い。

この曲は、リスナーが人生の中で経験する「誰かとつながりたい」「大切な瞬間を共有したい」といった感情を鮮やかに想起させ、愛情やつながりの尊さを改めて感じさせてくれる。

自分の中に湧き上がる感情をうまく表現できなくてもいい。この曲は、言葉だけでは完全に表現しきれない感情が、それでも確かに存在し、相手に届くと信じさせてくれる。

Okay / 幸せ

4th Single(Release:2010.06.23)

この曲は人生の有限性を受け入れることで、あらゆる景色が鮮やかな意味を持って心に響いてくる瞬間が描かれたロックバラードだ。

「Okay」というシンプルなフレーズが深い意味を持ち、その一言に込められた真っ直ぐさが、聴く人の心を揺さぶる。

今という瞬間の温かさや有限性の美しさを深く描き、未来にばかり目を向けがちな日常の中で、目の前の瞬間に価値を見出す大切さを、あらためて教えてくれるナンバーだ。

Aメロでは、日常の何気ない瞬間に宿る輝きが描かれている。

感動的な足どりで
坂を上ってゆくのはアナタ
とりとめのないことで
友と心の底から はしゃいでる

「感動的な足どり」というフレーズが、坂を上るというイメージをポジティブに響かせ、その足どりはどこか光に向かって進むような情景を思い浮かばせる。

そして友人との無条件のつながりが、心からの楽しさを生み出している。とくに大きな意味や目的を持たない何気ない会話も、きっと人生においてかけがえのない瞬間になる。結果や成果がすべてではないし、そんなことを気にしないほうがいいこともある。

Bメロでは、そんな美しさや感動に対する繊細な感情と、それを失う切なさと心の動きが描かれている。

時間が止まる景色を 見てしまうといつも
それを失う未来を 想ってはふるえてしまう
哀しくもヤワなこの心臓

時間が止まったかのように感じられる特別な体験。そしてその瞬間が永遠に続かないという現実が、自分を圧倒してしまう心情。

「心」ではなく「心臓」という身体的で生々しい表現が、その胸の痛み、感情の動きをよりリアルに伝えている。

サビでは、人生の有限性や死という避けられない未来を受け入れることで、今ここにある愛やつながりをより大切にすることの重要性が歌われている。

Okay いつかくる ボクのいない世界
真っ暗で静かな無限の空
Okay それならば もう少しだけアナタを
長く強く抱きしめてもいいよね そうだよね

死後の世界は、終わりのない静けさや広がりを持っているのだろうか。それをOkayと受け入れる力強さと、それに伴う静かな覚悟。

何もかも上手くいったあとの遠い未来に得られるかもしれない充実感ではなく、今ここにある確かな温もり。それは、無限には続かないからこそ、価値がある。

死が確実にやってくること、そして自分が死に向かっていることを見つめたとき、人はようやく本当の意味で生きることを考える。

何度でも無限にやってくる夏休みに特別な価値などない。無限には続かないからこそ、価値がある。

Okayと受け入れる姿勢で幸せになれるということでない。それは人生がよりリアルになるということだと思う。

喜びや充足感だけでなく、苦しみや喪失、限界すらもリアルに感じる力。それが、人生の一瞬一瞬をより深く味わい、生きることで得られる感動や満足感につながっていく。

この曲は、聴く人の未来への漠然とした不安を、今をどう生きるかという前向きな思考に変化させる力を与えてくれる。

Lone Pine / のんびり

タイトルの「Lone Pine」は、アメリカのカリフォルニア州の町。

古きよきアメリカの田舎町の穏やかな風景を背景に、そこにあるありふれた日常と主人公の抱く感情が繊細に描かれているバラード。

稲葉さんの表現力が、曲の中で描かれる情景や感情に命を吹き込んでいる。その空気感がリスナーを物語の中へと引き込み、心の深い部分に触れるような曲となっている。

Aメロでは、穏やかな日常の中に潜む、わずかなズレや満たされない感覚が描かれている。

贔屓のチームの勝敗が
今夜の気分を大きく左右する
っていっても たいした話じゃない

天井からつった テレビを見て
ボクは君の肩に手をまわすけど
きっとこれがベストなカタチじゃない

日々の中で経験する些細な喜びや落胆が、スポーツ観戦を通して描かれている。この「たいした話じゃない」という一言には、もっと大事なことがあるという価値観が暗に含まれているように感じられる。

「君の肩に手をまわす」という行為には、親密さや愛情を感じさせるが、その直後に「きっとこれがベストなカタチじゃない」と語られることで、完璧には至らない何かがあるという感覚が伝わってくる。

それは、理想と現実のギャップなのか、これ以上の何かがあるはずという漠然とした期待感なのか、お互いの気持ちや状況が複雑に絡み合い完全に一致しないことへの不安なのか。

Bメロでは、よりゆったりとした時間を共有し、相手との時間を大切にするさりげない思いやりが描かれている。

残りのピザを食っちまったら
たまにはいっしょにゆっくり歩いて帰ってみよう

ピザを食べ終わり、一緒に歩くというシンプルな流れが、関係性の心地よさやリラックスした愛情を象徴している。

「たまには」という言葉には、普段は何かに追われていたり、効率を重視したりしている生活の中で、時折立ち止まり、相手と一緒に過ごす時間を意識的に取ることの重要性が示されている。

サビでは、人生や愛情の旅路における未知の未来へと、不完全さを抱えながらも共に歩んでいくパートナーシップが描かれている。

この道は一体どこへ
つながっているのだろう
ヘッドライトが僕たちの
ふぞろいな影を 映し出してる ルル…

どこへ向かうのか分からないという不安と期待。

「ふぞろいな影」というフレーズでは、たとえ完璧でなくとも時間を共有しているリアルな人間関係が映し出されている。

最後の「ルル…」という歌声は、具体的な言葉を使わずに、物語を余韻の中に閉じ込めている。この表現には、答えを急がず、不確実性を抱えながらも進んでいく心の在り方が感じられる。

最後のサビでは、そのつながりを深めていきながら、日々の困難や不安を乗り越え、前向きな変化を求めていく力強い意志と希望が描かれている。

いつもより力強く
君の手を握りしめて
昨日よりもましな日に
してみたい きっとできるはずだろ ルル…

完璧を求めるのではなく、少しずつでも状況を良くしていきたいという現実的で前向きな姿勢。この控えめながらも力強い目標は、小さな進歩や変化の積み重ねを大切にしようとする思いを感じさせる。

リスナーにその余韻や感覚を自由に想像させるように、ルル…という歌声が希望や温かさを含みながら響いていく。

「昨日よりもましな日を目指す」という控えめで現実的な希望と「完璧じゃなくてもいい」と思わせてくれる優しさが、リスナーをそっと包み込んでくれるナンバーだ。

エデン / 精力的

禁断の果実を口にしたアダムとイブは楽園を失った。苦難を背負いながらも、彼らはそれを乗り越え、地上で新しい人生を築いていった。

そんな聖書の物語を通じて、主人公の確かな愛情と覚悟が描かれたロックナンバー。

「エデン」というタイトルは、楽園そのものではなく、愛する人と共に生きる現実が「新たな楽園」であるということを表現している。

単なるロマンチックな愛の歌にとどまらず、現実に根差した愛情と覚悟が歌われるこの曲は、自身の選択や行動に責任を持ち、愛に伴うその苦しみも受け止める覚悟が必要であることを、あらためて認識させてくれる。

Aメロでは、共に過ごすことで、何でもない日常が豊かで特別なものに変わる瞬間が描かれている。

なぜここまで僕らは 盛りあがれるの
古着屋でも本屋でも 散歩してるだけでも
別に何も買わなくても 贅沢な気分
大きな海を越えなくても でっかい旅をしているよう

愛する人と共有する時間は、それ自体が新しい発見や感動に満ちている。ふたりの関係の中で得られるシンプルな喜びが、生き生きと表現されている。

Bメロで表現されるのは、人生の中で抱える苦難や虚しさを、乗り越えるための希望や救いを見出した瞬間の開放感だ。

この世というものが 捨てたもんじゃないと 思える時だった

特別な出来事ではなく、日常の中にある小さな幸せが「この世」という大きなものに対する前向きな視点を与えてくれることもある。

サビでは、主人公が「あなた」に向ける揺るぎない愛情を強く表現している。

どこでもかまわないよ
あなたのいる場所こそ 至上の楽園だ
まぎれもない運命の人よ
つまずいてころんだって せーので笑って 前むくんだ 越えてくんだ
この目はあなたを 見るためにある

場所や状況に関係なく、相手がそばにいるだけで人生が幸福に満たされる感覚。その深い絆と愛情が、運命という言葉で強調されている。

そして、辛い時も一緒に笑い飛ばし、明るく乗り越えられる関係。

「この目はあなたを 見るためにある」というフレーズは、その愛情の焦点を見事に描き出している。相手を理解し、受け入れ、ありのままを尊重する成熟した愛が感じられる。

ブリッジパートでは、苦難や試練を伴いながらも、自分の限界を超えて新たな人生を築いていこうとする力強い決意が表現されている。

わかってるよ 例の果実を
かじったんだよ もう後には戻れない
頭の中つくるイメージ それで終わらせたくはない
今までの僕ならば 出来なかったことをさせてよ

ここですべての愛と罪と罰が 生まれてゆく さあ受け止めよう

人生や愛情において何か重要な選択をし、その一歩を踏み出したのだろう。その一歩は、ふたりの関係において越えてはいけない一線を超えたということかもしれないし、結婚という現実的なパートナーシップへの移行かもしれない。

それがなんであれ、愛が生む代償と選択に伴う責任を背負って生きていくことになる。

それらを受け入れ、これまでの限界や躊躇を超えて新しい挑戦をしたいという強い思い。成し遂げられなかったことに正面から向き合う真っ直ぐな姿勢が描かれている。

愛の本質は、きっと喜びと苦しみの両方を抱きしめる力なのだろう。愛は単に喜びに満ちた平面的なものではない。現実の中で互いを支え合い、苦しみも共有しながら築き上げていく。

誰もが、そのプロセスを経て、やがて本物の「エデン」へと辿り着けるのだろう。

CAGE FIGHT / ストレスが強い

なにかを成しとげようとしたとき、私たちは自分の限界を痛感する。

窮屈な現実に閉じ込められている感覚を檻に例え、嫌な現実から逃れたいという私たち自身の欲求との戦いを描いたロックナンバーだ。

稲葉さんの歌声には、思い通りにならない現実に向き合う闘志が込められており、リスナーにそのエネルギーをダイレクトに伝えてくれる。

Aメロでは、日常の些細な瞬間に現れる生活の中で感じるストレスや倦怠感、閉塞感が描かれている。

毒がゆるく回るように
気分が重くなる
信号を待ってたらこの街が
檻に見えたよ

現代社会における束縛感や窮屈さ。インターネットでさえ、新たな形での制約やプレッシャーを生み出している。

Bメロでは、現実から逃れたいという強い欲求を抱えながらも、実際には逃げ場がないという現状が歌われている。

逃げたいと思うけど どこに行けばいいの

逃げたい気持ちが募る一方で、心の平穏や満足感を与えてくれる目的地すら分からない。

サビでは、そんな現実の厳しさ、自分の限界を痛感しながらも、それを受け入れ、闘志を燃やして進むことの重要性が描かれている。

戻れない 道はいずってる
誰かも 同じように cry
のぼれない 高い壁がある
ゆるいショック この身をひきさく
ちっぽけな自分を知ったなら 腹くくって Fight

どんなに願っても過去に戻ることは出来ない。この当然の事実ですらも、人の心には大きな影響を与え、その心を締め付ける。

じわじわと身を切るようなゆるい苦しみと葛藤。後悔や未練、喪失感を引きずりながら、私たちは、それでも生きていく。

きっと外的な逃避先ではなく、自分の内側に目を向けることが必要だ。自身の弱さを認めた後に、それでも戦う覚悟。簡単な解決策はない。時間はかかるだけかかる。その苦痛や退屈さから目を逸らさず、焦らずに一歩づつ前に進んでいくしかない。

困難な状況から逃げ出したいというフラストレーションに正面から向き合うこの曲は、出口が見えないような孤独感に、「ここで戦え」というシンプルなメッセージで応えてくれている。

きっと逃げ道を選ばずに立ち向かう覚悟を引き出してくれるだろう。

今宵キミト / 愛情のある

言葉では届かない心へのアプローチがテーマとなっている。

「君」が抱える悲しみや葛藤に焦らずに寄り添う主人公の心情が描かれたロックナンバー。自身の感情を押し付けることなく、「君」が自然に心を開いてくれること願っている。

揺れ動くその繊細で切実な感情が、ダイナミックなサウンドを通じて希望的に描かれている。

Aメロでは、静かなひとときを過ごしながらも、「君」の内面にある何か深い葛藤や悩みを主人公が感じ取っている情景が描かれている。

音もなく ろうそくが燃えているよ
その横顔を じっと見ながら
たまにはこんなもの いいと思うけど
いったい君は何と戦ってるの

静寂の中で揺らめくろうそくの火は、「君」の心の奥深くで揺れる感情や葛藤を象徴しているのだろう。

時にはそんな時間も悪くないと、二人の間にある静けさや沈黙を受け入れながら「君」の横顔を見つめることで、その感情や考えに触れようとしている。

言葉ではなく沈黙の中で、その真意を探ろうとしているのが印象的なシーンだ。

Bメロでは、「君」の感情を共有してもらえないことに対する主人公の切実な思いが、率直に表現されている。

うわの空な態度 見せられんのもつらいよ
むなしげなその目 涙さえ寸止め
考え出したら最後 日中夜とまらないよ
いっそのこと爆発して見せてよ

隠されたままでいるより、たとえ衝突があったとしても、「君」の本音を知ることで、二人の間にある壁を乗り越えたいという気持ちが表現されている。

サビでは、主人公が抱える理想と現実のギャップを非常に切実に描写している。

今宵君と 思い切りハジけたいのに
なぜに 目線は微妙にずれたまま 戻らない
ハモったりして歌ったらさぞ楽しいだろう
けど僕の言葉はしゃぼんのように 次から次へと しぼんで消える

「ハモる」という表現は、二人が調和して心を通わせる象徴として捉えることができる。

「しゃぼんのように」という比喩表現は、自身の言葉が軽く、儚く、相手の心に届く前に消えてしまう様子を表現している。

ともに過ごす理想的な時間は訪れず、いくら言葉を尽くしても、その本当の思いが「君」に伝わらない現実のなかで時間が過ぎていく。

最後のサビでは、その状況を受け入れながらも、自分の気持ちを伝え続ける姿勢を示している。

今宵君と やさしい夢を見たいのに
なぜそんなに 悲しい夢に捉まってるの
そろいのステップでも踏んで おどけてみたいけど
その心に向けてただひたすらに 歌でも歌いながら僕は待とう

「歌でも歌いながら」という表現は、自分の気持ちを穏やかに伝え続ける姿勢を象徴しており、「君」を無理に変えようとするのではなく、支えようとする優しさが伝わってくる。

自分が望む理想的な状況にはまだたどり着けないと感じながらも、その心が開かれ、二人の間に調和が生まれる瞬間を信じて待つ覚悟が描かれている。

そして、この曲の最後は次のフレーズで締めくくられる。

音もなく ろうそくが燃え尽きるよ

ろうそくが燃え尽きた後に訪れるシーンは描かれていない。その終わりが劇的ではなく、音もなく静かに訪れるという描写とその曖昧さが、楽曲全体に深い余韻を与えている。

二人の関係がどうなるのかを想像する余地を残すことで、楽曲全体の美しさをさらに引き立てている。

それを踏まえ、あえて考察するとすれば、この描写は、「君」の心の奥深くで揺れる感情や葛藤が消えゆく未来を象徴しているのだと思う。

感情を爆発させたり、強く主張するのではなく、穏やかに相手の心を待ちたいと思っている。そんな感情的なテーマに共感できる人にぜひ聴いてほしいナンバーだ。

この手をとって走り出して / 感動する

差し伸べた手を受け取ってもらうことは、信頼関係や愛情があってこそ成立する。

自身の差し伸べた手が、相手に受け入れらることへの純粋な願いや、どこまでも行動を共にしたいという献身的な愛情が、曲全体から溢れ出している美しいバラード。

「この手」という言葉が、自らの存在や気持ちを相手に委ねるような優しさや、控えめな温もりを感じさせる。

稲葉さんの表現力豊かな歌声が、歌詞の持つ感情をダイレクトにリスナーの心に届けてくれている。温かみのある部分では、そっと寄り添うような優しさを感じさせ、力強さのある部分では、愛する人と共に未来へ進んでいく確かな決意が伝わってくる。

リスナーの心に深い余韻を残す感動的なバラードとなっている。

2番のAメロでは、恋愛における執着心や依存に対する自己防衛の意識が感じられる。

この人しかいないなんて
思わないようにしたい
つらい思いするのはいつだって
愛情の強いほう

愛情の強い側が、相手からの愛情の返答や行動に一喜一憂し、期待が裏切られたときに大きな痛みを感じる。

自分自身の心のバランスを保とうとしながらも、それでも愛さずにはいられない。その矛盾がこのフレーズの核心なのだろう。

2番のBメロでは、伝えたい大切な本音を口にすることで、いま共有している楽しい時間を台無しにしてしまうかもしれないという不安や躊躇がが感じられる。

楽しい時をゆがめてしまう勇気を
しぼり出せずに
わざと遠まわしな言葉
えらんでいたけど

「遠まわしな言葉」には、相手を気遣う優しさと、自分の弱さの両方が込められている。

相手への配慮を示しつつも、自分の気持ちを完全には表現できないもどかしさ。この葛藤がリアルで繊細な感情を表している。

2番のサビでは、愛する相手と共に新しい未来を切り開いていきたいという強い願望が感じられる。

この手をとって走り出して ねえ
ここじゃないどこかへ
光浴びて風にふかれ
あふれる人波つきぬけて
話したいことが体の奥に
雪のように降りつもる
他の誰より笑ってくれる
Just for you あなたに届けたい

心の束縛や制限から解放され、多くの困難や混乱を乗り越えていく。目指すべき場所へ突き進もうとする意思の力強さと、その背景にある繊細な感情。

「雪のように降りつもる」という比喩表現は、伝えたいことが溢れているけれど、それをまだ伝えきれていないというもどかしさが主人公の心に蓄積されている様子を美しく表現している。

現実的な閉塞感や内面的な葛藤、そして自由への希望という相反する要素がドラマチックに融合している。

「愛情の伝え方」という普遍的なテーマ対し、たとえ愛情は不器用であっても、行動と勇気を通じて、その気持ちを形にするというひとつのアンサーが示されている。

愛情を伝えようと伸ばした手が、いかに価値あるものであるかを教えてくれるこの曲は、きっとリスナーの心にも深い共感と感動を与えてくれるだろう。

去りゆく人へ / 平穏

別れた相手に対する未練ではなく、真摯な愛情と感謝が込められたロックナンバー。

直接的な手助けはできなくとも、「想う」という行為そのものが持つエネルギーは、たとえその思いや願いが届かなくても、別れの中に優しさや希望を生み出してくれる。

エネルギッシュなバンドサウンドが、「何もできない」と思う心の一場面を、鮮やかに彩り、言葉だけでは伝えきれない感情の奥行きを補完することで「その瞬間を乗り越える力」をリスナーに届けてくれている。

Aメロからは、その季節に込められた思い出や未来への期待が呼び起こされる様子が伝わってくる。

窓をあけて思い切り空気を吸いこんだら
大好きな季節が始まるのがわかる

窓を開けて新鮮な空気を吸い込むという行為から、閉ざされていたものを解放し、新たな始まりを迎えるイメージが描かれている。

Bメロでは、忙しさに追われる日々の中で、自分が本当に大切にしているものを再確認する瞬間が描かれている。

仕事におぼれていても
ふとしたときその声を求めてしまう

温かい思い出に寄り添う時間は、きっと日々の現実を支える力になる。

サビでは、自分の無力さを受け入れつつ、それでも別れた相手の幸せを祈ることで、自分なりに気持ちを整理し、前へ進もうとする心の強さと優しさが表現されている。

去りゆく人よ 迷わないで
幸せに向かいますように
何もできないボクだから
空を見てぼんやりして
ただ願うだけ

別れの痛みを超えた温かな気持ちで、相手の選択を尊重し、最良の未来を願う。

見上げる空に、すこしの孤独や切なさを感じながらも、どこまでも広がっていく空にその願いを届けている。

別れの中にも見出せる希望を描いたこの曲は、リスナーそれぞれの人生経験と重なり合うことで、さらに味わい深く特別な意味を持って、リスナーの心に前向きな気持ちや優しさを届けてくれるだろう。

不死鳥 / 衝撃的

不屈の精神を詩的かつ感情的な世界観で描いたロックナンバー。

明るくはないけれど、完全な暗闇ではない。絶望に飲み込まれることなく、消えない希望を頼りに、内なる情熱を燃え上がらせる主人公の内面が力強く表現されている。

それは、灰の中でじっと蘇るときを待つ不死鳥の姿と重なる。タイトルの不死鳥は、苦しみを乗り越えることで得られる強さと揺るぎない情熱を象徴しているのだろう。

バンドサウンドを基盤に、ピアノやストリングスといった繊細な要素が織り交ぜられることで、壮大で感情的な世界観が生み出されている。

Aメロから、稲葉さん特有の詩的で映像的な表現が光っている。

たしかに聞こえてた やわらかな寝息
それは気のせいじゃなく ほの暗い窓の形といっしょに覚えてる 場所

記憶の断片が、センチメンタルで少し神秘的な雰囲気で描かれている。その「場所」は単なる背景ではなく、自分と相手の関係が形作られた重要な舞台なのだろう。

「ほの暗い」という表現が持つ微妙なニュアンスには、安心感と切なさが共存するような感覚が同時に漂っており、深い感情の余韻を感じさせる。

つづく次のAメロでは、人生の美しさとその裏側にある儚さ、そんな人生の循環を見つめている様子が描かれている。

まぶしい出会いは はかなさの香り
楽しみと哀しみは コインの裏表 ぴたりくっついたまま 回ってる

期待感を伴う特別な瞬間も永遠には続かない。それでも、そのまぶしさを「香り」という感覚的な言葉を用いて表現することで、記憶には長く残っていることを伝えている。

そして、楽しみと哀しみの不可分な関係をコインにたとえ、その躍動感のある動きが、人生が連続的に変化する様子を描写している。

Bメロでは、何か大きな変化を迎える直前の静かな時間の流れが描かれている。

いずれ飛び立つ鳥のように
じっと空を見てたよ

空は、可能性、自由、希望、未来など、多くの象徴的な意味を持つモチーフだ。自身の未来について深く考え、飛び立つべき方向を見定めている姿勢が描かれている。

サビでは、希望を失わない主人公の強さや信念が描かれている。

裏切られても ほっとかれても
きっとまためぐり逢う
不死鳥のように 炎があがるように
いつか君は僕の前に現れるでしょう

裏切りや孤独、そんな痛みを経験しながらも、それを乗り越えて、失われた「君」ともう一度めぐり逢うだろうという確信。

痛みや絶望を人生の一部として受け入れ、たとえ失ったものがあっても、それが必ず形を変えて戻ってくるという人生の循環を、不死鳥として表現しているのだろう。

最後のサビでは、人間の本能的な欲望や衝動を含む、よりリアルで生々しい感情をも内包して生命の力強さを描いている。

ひき裂かれても 忘れられても
果てることのない夢
不死鳥のように 炎があがるように
罪深い鼓動は激しく鳴りはじめる

本能的な欲望や衝動は、理性では制御できないがゆえに、人間の行動を突き動かす最も純粋なエネルギー源でもある。

希望や夢が「未来」に向かう力であるなら、欲望や衝動は「現在」を強く生きる力だろう。その両方が生命を支える両輪であることを示しており、矛盾や葛藤を内包するリアルな人間性が、生命そのものの躍動感として描かれている。

この「不死鳥」は、苦難や喪失に直面しながらも、希望を再び灯そうとするすべての人々へのエールとなる曲だ。

矛盾を抱え生きることのリアルさを肯定し、その深いメッセージ性と壮大なサウンド、そして稲葉さんの力強いボーカルが熱を持って、再び立ち上がり生き抜く生命の鼓動を、リスナーに届けてくれる。

主人公 / やる気がある

自分の限界と真正面から向き合いながら不完全な現実を進んでいくというメッセージと、荒々しいサウンドで融合することで生まれるシナジーが、聴く人の心を揺さぶるロックナンバーとなっている。

自分に与えられた能力や環境の中で「何ができるのか」を冷静に見極める姿勢が強調されている。夢や理想に振り回されるのではなく、現実的に可能なことを全力でやり抜こうとする決意が伝わってくる。

不可能は不可能なのだと理解し、現実を受け入れる覚悟と同時に、そこから新しい可能性を模索しようとする強い意志。そんな自分自身の物語を生きる「主人公」としての生き方を、力強く後押ししてくれる。

Aメロでは、自分の限界を認識しながらも、そこで終わるのではなく、自分の強みや現実的な可能性を冷静に見定めようとする姿勢が描かれている。

選ばれた人でありたい あるはずだと
くいさがってきたけど
でもどうやら ボクはまったくフツーらしい
ということは 何ができるのか

誰しもが一度は抱く、自分には特別な才能や使命があるという思い。そんな幻想から目覚め、自分は「フツー」であるという現実を受け入れる。

しかしただ落胆して終わるのではなく、その事実を前提にして、何ができるのかを問い直す心情が表現されている。

Bメロでは、自己認識や行動における冷静さと柔軟さがテーマとなっている。

自分を誤解したままで
つっぱしるのはやめて
ドラマの筋書きを変えてみろよ

現実を直視しつつ、自分の人生という物語の展開を自らの手で再構築していく意思。固定観念や従来の思い込みにとらわれず、新しい視点や選択肢を見つけて自分の道を切り開いていく積極性が示されている。

サビでは、自分の力で道を切り開いていこうとする決意と、自分らしい生き方を見つける姿が描かれている。

つきぬけたい ボクはボクなりのやり方で
もってるもんで やるしかないだろう yeah
迷いながら ぐらつきながら それでも必死
そんなやつが 今日から主人公

特別な才能や確信を持たなくても、現実に向き合い必死に努力する人こそが、自分の人生の「主人公」であることを強調している。

才能が足りなかったり、時間がなかったり、予想外のことにつまづき、人が思うような行動をしてくれなかったり、私たちの人生は、空想のように完璧ではない。

それはとても気の滅入る現実だ。この曲は、その現実に解放的でポジティブなメッセージを込めている。

何の問題もなくすべてが完璧に上手くいく主人公の物語に魅力は生まれない。

聴く人に現実と向き合う勇気を与えるだけでなく、不完全さの中にこそ価値や美しさがあるという新たな視点を示してくれるナンバーだ。

リトルボーイ / 触発された

タイトルの「リトルボーイ」には、文字通り「少年」という意味と、第二次世界大戦においてアメリカ軍が広島市に投下した原子爆弾のコードネームという、二つの意味が込められている。

人間が持つ純粋で圧倒的なエネルギー。それが破壊ではなく、希望や幸福を生み出す方向に向かうべきだというメッセージが伝えられている。

困難な時代だからこそ、現実の厳しさに屈すことなく、希望を選び取ることの大切さ。同じ「エネルギー」が使い方次第で世界を破壊にも幸福にも導いていく。

そのエネルギーを希望や幸福を生み出す力に使うべきだという訴えは、原子爆弾「リトルボーイ」がもたらした破壊と悲劇への明確なアンチテーゼを成している。

全編にわたってストリングスが取り入れらており、ロックサウンドの持つ攻撃的でエネルギッシュな側面に、ストリングスの持つ荘厳さや叙情性が加わることで、「リトルボーイ」のテーマを一層際立たせている。

Aメロで歌われる場面では、日常の中でふと感じた幸せや温かい感情が描かれている。

「幸せをどうもありがとう。」
あのおばさんはそう言って
妙ににっこり手をふりながら
エレベーター降りていったよ

主人公とおばさんの間にあった具体的な出来事は描かれていない。それでもきっと主人公の何気ない行動や言葉が、彼女の心を和ませたのだろう。

それはきっと主人公の意図していない反応だったに違いない。それでも彼女の言葉としぐさは、主人公の心に何かポジティブな影響を与えただろう。

Bメロでは、主人公の中に渦巻く抑えきれないエネルギーや衝動が表現されている。

むずむずする体で
汗と涙 今日もとびちらして
限界を知らないまま
暴れたい 壊してしまいたい

何かをせずにはいられない、もしくは何かを変えたいという切迫感。良い方向にも悪い方向にも振り切れるポテンシャルがあるエネルギー。

「暴れたい 壊してしまいたい」このフレーズが表現している感情は、破壊的な衝動ではない。現状を打破し、新しいものを創り出すための明確な意思だろう。

何かを破壊することで見つけられる突破口。主人公の中にある未完成で原初的なエネルギーが鮮烈に描かれている。

最後のサビでは、「リトルボーイ」という言葉を用いることで、現実の残酷さから目を背けるのではなく、その悲劇を踏まえた上で希望ある未来を描こうとするメッセージが力強く伝えられている。

リトルボーイ ぞっとする現実に
アイムア リトルボーイ うちのめされるかもね
リトルボーイ かなしくとも くやしくとも
アイムア リトルボーイ  だれひとり殺しちゃいけない
ボクが炸裂させるのはハピネス
「幸せをどうもありがとう。」

戦争や暴力、理不尽な出来事といった世界の残酷さ。悲しみや悔しさといった感情を抱えながらも、現実の厳しさに屈しない力強さ。

「幸せをどうもありがとう。」このフレーズは、ポジティブな連鎖の始まりを象徴する重要なフレーズだ。

その小さな感謝の一言が、希望に満ちた未来へつながる一歩となる。

自身が抱くエネルギーは中立的なものであり、どちらの方向に使うかは自分の選択に委ねられている。

この曲はきっと、自分が持つエネルギーをどう使うかという問いに対し、現実を変えていこうとするリアルな行動力を与えてくれるだろう。

赤い糸 / 思いにふける

黄昏の中で感じる、別れの予感と運命の赤い糸に託されたつながりが描かれるバラード。

自分の知らない世界に足を踏み入れようとする「あなた」の決意を感じ取った瞬間の切なさと、その心に広がっていく深い愛情が表現されている。

いまは道が分かれてしまっても、再びどこかで巡り合えるのではないか。儚くも温かい願いが、この曲の静かなメロディに滲んでいる。

アコースティックギターが主軸のシンプルで繊細なサウンドが、黄昏の帰り道という情景をより鮮明に浮かび上がらせ、主人公の胸に去来する感情を優しく包み込むように響きわたっている。

「切なさ」と「希望」が共存する感情の余韻が、聴く人の心に温もりを届けてくれる。

Aメロは、ふたりがいつもの帰り道を歩く、ごく日常的な光景から始まる。

見慣れた町 ゆっくり吹き抜ける風
ふたりして いつものペースで歩いてる

ふざけ合って 笑った後に気づいた
見たことない 大人びたそのまなざし

これまでも共有してきた穏やかな時間と、何気なくて心地よいふたりの関係性。

その和やかさの中にふと訪れる変化。「あなた」の目の奥に宿る、見たことのない視線は、今まで共に歩んできた景色や、時間ではなく、より遠くの未来を見据えている。

いつもの日常に訪れる変化がもたらす一瞬の切なさが描かれている。

Bメロでは、言葉を交わさなくても分かり合えるふたりの関係と、相手の気持ちを静かに受け入れようとする主人公の気持ちが込められている。

何も 話さなくてたっていいよ 大丈夫
気持ちはきっと 間違いじゃない

無理に気持ちを言葉にして確かめ合う必要はない。

いまこの瞬間に抱いている想い。寂しさや不安、それと同じくらいの愛情や信頼、そのすべてが確かに存在していることを、自分自身に言い聞かせるような響きが感じられる。

サビ(A’メロ)では、迷いなく新しい未来へ進もうとする「あなた」の決意と、そこから何かを感じ取ろうとしている主人公の姿が描かれている。

ただ 真っすぐ 何かに突き進んでいくあなたをね
ついついね 見つめてしまう

一緒にいるはずなのに、その距離は少しずつ変わっていく。お互いの視線の先にあるものが違うという切ない現実。

それでも「あなた」を見つめてしまうのは、そこに確かな愛情があるからだろう。

ブリッジパートでは、「赤い糸」という象徴的な言葉を通して、たとえ物理的に離れたとしても、運命的なつながりが消えることはないという願いが込められている。

そばにいても 離れても
だれかとだれか つなぐ 赤い糸

ここで注目すべきは「あなたとわたし」ではなく「だれかとだれか」 という表現が使われていることだ。

それは、より大きな視点での「人と人のつながり」を表現しており、それぞれが別々の道を進んだ先で、新たな「赤い糸」に導かれることを示唆しているのかもしれない。

巡り巡る縁の中で、別れもまた、人生の流れのひとつとして静かに受け入れようとしている主人公の心情が表現されているのだろう。

この曲の最後のフレーズで描かれる儚くも美しい情景は、どこか穏やかで静かな余韻を残している。

黄昏の空に 星がひとつ落ちる

黄昏は昼と夜の狭間。ひとつの時間が終わり、次の時間へと移ろうとする瞬間だ。

完全な夜ではなく、まだ少し光が残る黄昏時であることが、希望と切なさが入り混じる心情を映し出しているのだろう。

星が落ち、ひとつの輝きが消えていく儚さ。

それは、ふたりの関係が終わりを迎えることを示唆しているだろうか。あるいは主人公が「あなた」と再び巡り合える願いを込めた「流れ星」を描写しているのだろうか。

この描写が美しいのは、明確な結論を出さずに解釈の余地を残したところだろう。その答えは聴く人の感性に委ねられている。

別れを嘆くのではなく、運命の流れの中で再び巡り合うこともあるかもしれないと願う、切なくも美しいメッセージが、聴く人の心にそっと優しく寄り添ってくれるナンバーだ。

イタイケな太陽 / 幸せ

純粋な愛情がまぶしく輝く、アルバム『Hadou』のラストナンバー。

「君」へのまっすぐで純粋な愛情を、ポップで爽快なサウンドにのせて描いた一曲。太陽の光に包まれるような晴れやかで温かい感情が、聴く人の胸にまっすぐ届く。

この晴れやかなメロディは、希望に満ちた余韻を残し『Hadou』を締めくくってくれる。

Aメロでは、「君」との出会いから積み重ねてきた時間と、そしてその存在が時間を超えても輝き続けていることが表現されているように感じられる。

ああ 初めて君を見てから
何年何ヶ月何日だろう
ああ 燦然たる笑顔見せられて
遠くから新しい朝が来た

「遠くから新しい朝が来た」というフレーズには、「君」との出会いが主人公の人生に光をもたらしたという意味が込められているのだろう。

劇的に何かが変わるわけではない。それでも、夜のような心の中に少しずつ光が差し込み、やがて「新しい朝」として満ちていく。

Bメロでは、自己嫌悪にとらわれていた主人公が前向きになり、生きる意味を見出したというストーリーが浮かび上がっている。

自分自身の 醜いとこ 探してはイライラし続けてた
僕に生きる糧を 与えてくれたよ

ネガティブな感情さえも包み込んで、優しく照らしてくれる「君」への感謝と愛しさ。

サビでは、「君」の存在の大切さや、守り抜きたいという強い思いが表現されている。

You are my sunshine イタイケな太陽
涙を燃やして輝く
聖なるぬくもり守りぬくのは僕だけの Pleasure

「イタイケな」というという表現が加わることで、「君」がただまばゆい光を放つだけでなく、純粋で、守ってあげたくなるような存在であることが強調されている。

そして時には「君」も涙を流しながら、それでも輝き続け、より生命力に溢れた光を届けてくれる。

深い愛情と敬意が込められている。

自分の欠点にとらわれ、ネガティブな感情に支配されていた「僕」が、「君」という存在に照らされ、新しい朝を迎える。その変化は、シンプルでありながらも力強い。

涙を燃やして輝く「君」の光は、生命力に満ち、まっすぐに「僕」の胸へと届く。そして、その光を守りぬくことが「僕」にとっての喜びとなるのだろう。

アルバム『Hadou』のラストを飾るにふさわしい、晴れやかで爽快なメロディは。聴く人の心を温かく照らし、そっと背中を押してくれるような余韻を残してくれる。

“とぎれそうで とぎれない 神秘の波動”

稲葉浩志「Hadou」
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