平然とした

B’z 9th Album「SURVIVE」-生きるために大切なこと-

UnsplashDanny Howeが撮影した写真

"強く生きるために"

強く生きるというのは、
必ずしも何かに打ち勝つことや、
常に前向きでいることだけを
指すわけではない。

自分の弱さや苦しみ、不安を認めた上で、
それらと共に歩んでいく姿勢なのだろう。

完璧である必要はない。
心が折れそうなときは、無理をせず
立ち止まって休み、自分を見つめ直す、
そんな時間が必要だ。

たとえそれがカッコ良くなくとも、
「自分らしく」生き抜こうとする気持ちが
「SURVIVE」だ。

アルバム全体を通して、主人公が様々な感情を
抱きながらも、一歩ずつ前に進む姿が、
幅が広いサウンドと言葉で紡がれている。

自分にとっての「大切なこと」を見つける、
そんな発見につながるアルバムだ。

Release : 1997.11.19

DEEP KISS / 衝撃的

オープニングは、重厚で深みのある
ハードロック・ナンバーから始まる。

松本さんの、シンプルながらもキレのある
ギターリフが、曲に緊張感や強いエネルギーを
もたらしてる。

徐々に大きくなっていく心臓の鼓動音から、
突如、このギターリフが鳴り響く。

そしてその瞬間に聞こえる、
稲葉さんの危険な笑い声。
それが曲に不安定な緊張感を与え、
リスナーを一気に、この曲の世界に
引き込んでいく。

この曲での稲葉さんのボーカルは、
リスナーへ語りかけるスタイルを採用しており、
メロディに乗せるのではなく、詩的な表現として
情感豊かに歌われ、言葉の持つ意味がより
強調され、感情が際立っている。

そして稲葉さんの得意とするシャウトも加わり、
感情の高まりや葛藤を、躍動感に満ちた
魅力的なパフォーマンスで聴かせてくれる。

タイトルの「DEEP KISS」は、
深い愛情や、つながりへの渇望を
象徴している。

この曲のAメロは、自身の過ちや未熟さ、
そんな現実に対する苛立ちが
表現されている。
"予想通りあの娘は逃げちゃった
いっさいがっさい持ってかれました
やはり現実は渋い
わかってる わかってるって
ハヤかったり ヘタクソだったり
やたら気がきかなかったり
そりゃ他に男もできるわ"

精神的にも、肉体的にも相手の
欲求を満たすことができない、
自己批判的な視点と、現実の厳しさ。

Bメロでは、それでも、まるで
自分に言い聞かせるように、前向きに
自分の目標を持ち続ける決意が
示されている。

"僕には僕の夢がある 破れかけても夢がある
ふられつづけてもこたえない 
しょうもない悩みは忘れよう"

現実を直視しながらも、
希望を捨てないことの大切さ。
それが、前進し続けるための
原動力となる。

そして、サビでは、寂しさや孤独に
打ち勝ちたいという願望と、
現実とのギャップを埋めるための
深い愛情やつながりを渇望する
心の葛藤が歌われている。

"強力な寂しさに負けない
アイアンマンになりたい
ちょっとやそっとではひび割れない 石のように
ねぇ だれかおくれよ DEEP KISS"

圧倒的な寂しさや孤独に屈しないほどの
強靭な精神力や強固な心。
それを手にするために、ギリギリの状況で
踏ん張っている、そんな危うさと、
精神的な救いを求める切実な思いが
表現されている。

この曲のラスト、稲葉さんのシャウトと
サウンドに荒々しさや攻撃性を加えた
松本さんのエモーショナルなプレイが、
情熱的でダークな印象をリスナーに
残している。

複雑で混沌とした感情が込められている
この曲は、自身の弱さを考えすぎてしまう前に、
エッジの効いたサウンドで、そのモヤモヤを
燃やし尽くしてくれるようなエネルギーに
満ちている。

自身の感情を解放したいときに、
ぜひ聴いてほしいナンバーだ。

スイマーよ!! / やる気がある

現実の困難や試練に直面しながらも、
諦めずに前に進もうとする人々。

そんな人々を「スイマー」という
言葉で象徴している。

この曲は、その「スイマー」たちの
情熱的な感情を鼓舞してくれるような
エネルギーに溢れたロックナンバーだ。

イントロから、松本さんの明快かつ、
爽快なフレーズが曲全体のテンション
を一気に引き上げていく。

その短い時間で、曲全体のエネルギーと
方向性を明確に伝えてくれるサウンドを
聴かせてくれる。

この曲での松本さんのギターは、
曲全体のバランスを考え、
曲を支える役割に徹している。
それでも、テクニカルなギターワークは
随所に見られ、全体のサウンドを
支える重要な要素となっている。

そして、非常にアクティブな
ベースラインがリズムをしっかりと
支えながらも、跳ねるようなグルーヴ感で
曲に軽快さとダイナミズムを与え、
曲全体のエネルギーを高める
役割を果たしている。

この曲の稲葉さんのボーカルは、
Aメロではソフトに歌われ、
Bメロから徐々にテンションが上がり、
サビでは、特に高音域を駆使して、
曲のエネルギーや感情を引き立て、
聴き手に強いインパクトを与えている。

低音域と高音域とが巧みに交わることで、
感情の高まりがダイナミックに
表現されている。

この曲の2番のAメロでは、
本当の挑戦や行動が始まっていない、
そんな状況が歌われている。

"ていうか まだ何もはじまっていない
だからまだ 何も終わっていない
夕闇に飲み込まれそうな 我が身に
うっとりしてるだけ"

この「夕闇」という言葉には、
「変わらない日常」という意味が
込められている。

現状を変えたいという気持ちはある。
それでも行動に移さず、状況を軽んじて、
やればできるはず、そんな根拠のない
自己陶酔に浸っているだけ。

そして2番のBメロでは、
そんな惰性的な感情の流れに
縛られず、意識的に前向きな行動を
取ることの大切さが
表現される。

"ムリヤリでもいい ここはひとつ
「どうもありがとう!」って叫んだら"

無理をしてでも行動を起こすこと、
それ自体にきっと価値がある。

感謝の気持ちを声に出すことで、
心の中の重い感情を解き放ち、
前向きなエネルギーを周囲や
自分の心に取り戻すことができる。

2番のサビ。
ここで歌われるのは、努力が
報われる瞬間の喜びや達成感。

"純情の海をクロールで横切っていこう
僕らは悩み多きスイマーだ
かいて強くかいて 歓びにタッチすれば
明日も捨てたもんじゃないだろう"

失敗を恐れる不安や恐怖心で、
次のステップのための挑戦を避けたり、
リスクを取らない選択をする。

「失敗はしなかった」
そのことで得られる経験は、
きっと学びや成長へは繋がらない。

誰もが、人生の中で多くの悩みや
課題に直面している。
それでも、純粋な感情や思いを胸に抱き、
抵抗や浮力を掻き分け前進していく。

そして、多くの失敗を乗り越えた先で、
触れることが出来るものにこそ、
きっと明日への希望を見出せる。

ラストのサビでは、人生の流れや
チャンスを逃してしまう瞬間について
描かれ、意識をしっかり持って進むことの
重要性が歌われている。

"少々のことで 見えないくらい小さなことで
流れをつかみそこねる スイマーよ
ぼうっとしてるうちに
にごらせちゃった 水の中
しっかりと目をこらしてゆこう"

誰もが、日常の中で些細なことに
心を奪われたり、小さな困難が原因で
大切な機会や進むべき道を
見失うことがある。

気を抜いたり、集中力を欠いた
つかの間に目の前の状況がにごって
見通しが悪くなる。

状況がクリアになるまで、そこで
ずっと立ち止まっている時間も
余裕もない。

状況が不明瞭であっても、
集中して物事を見極め、
自分の進むべき道を
目をこらして見つめる。

完璧なフォーム、息継ぎ、スピード、
たとえそんな風に泳げなくとも、
真っ直ぐに泳ぎ続ければ、いずれ
歓びに触れることが出来る。

挑戦への不安や恐れを抱えている人、
小さなことに悩み迷っている人、
努力を続けるモチベーションを保ちたい人、
そんな人たちに、ぜひおすすめのナンバーだ。

この曲は、きっとポジティブなエネルギーを
与えてくれるだろう。

Survive / 平然とした

このアルバムのタイトルナンバー。

どんな状況でも自分を見失わずに
強く生きる決意が「Survive」
という言葉で表現されている。

物事がうまくいかず、
苦しみやストレスが長く続くと、
諦めさえずれば楽になれると
と感じることがある。

もちろん、いちど手を引くことで、
精神的な負担を軽減できるし、
諦めること自体が必ずしも
悪いことではない。

前向きな選択の一つであり、
新たな方向に進むためには
必要なことだ。

それはそうなのだが、諦めることが
「一時的な楽」だけで終わらず、
長期的に見て、自分にとって
納得のいく選択であるかどうか。

山は、途中で下りると後悔する。
中途半端な苦しさで諦めてしまっては、
あとになって、もっと出来たかもと
感じてしまう。

逆に、自分の持てる力や情熱を
すべて注ぎ込んで、やり切ったと
言い切れるなら、たとえ結果が
思い通りでなかったとしても、
そこには充実感や達成感が残るだろう。

この曲のタイトルが、
「Never Give Up」ではなく、
「Survive」なのは、
自分の決断を信じる心、
その先にある答えを探し続ける
姿勢が歌われているからだ。

そんな「Survive」のサウンドは、
柔らかく深みのあるトーンで
奏でられる松本さんのギターと、
内省的な葛藤を優しく、力強く
表現する稲葉さんのボーカル。
お互いのバラード的な要素をうまく
ロックと融合させたロックバラード
のナンバーだ。

この曲のAメロは、距離ができた
人間関係に対し孤独を感じながらも、
どう行動すればいいのかわからない
不安や迷いの感情から歌い出される。

"遠くはなれてる ここんとこの僕ら
そういうもんだと うなずけば楽なんだろう
さぐりあう 人と人 行くあてないエネルギー
イエスなのかい これでいいのかい
答えが見えるのかい"

お互いの気持ちや意図を探り合い、
方向性を失ったまま、内に溜め込んだ
フラストレーション。

その距離や変化を受け入れ、
近づくことを諦めてしまえば
楽になるかもしれない。

それでも、現状を受け入れるという、
その選択は正しいのだろうか。
そしてその結果、どこに導かれるのか、
確信できないという不安が描かれている。

2番のサビでは、感情的な痛みや困難を
受け入れ、前進していく強い意志が
表現されている。

"まだやだ 僕は帰りたくない
傷つくことは oh,痛いけど
だれが呼んでも 今は聞こえない
だれかがリタイヤしても 終わらない
I will survive"

現状から逃げたくない、まだ
諦めたくないという強い意思。

そして、他人の声や選択に影響されずに、
自分の信念を貫く姿勢。

「I will survive」は、
最終的には、自分の力で未来を
切り開いていくというメッセージを
伝えている。

ブリッジパートでは、心の中に
不満や不安を溜め込んで生きることが、
どれほど辛く、意味のないものかを
問いかけている。

"不満をためて 不安をためて
だれが生きたいだろう"

もちろん、そんな人はいないはずだ。
それでも人は、気がつくと、
ネガティブな感情に飲み込まれている
ときがある。

それは生きていく上で、誰もが感じ、
避けることが出来ない感情だ。

だが、答えは、その感情の先にある。
目先の感情や利益にとらわれずに、
信念に照らし合わせ行動することが、
「Survive」なのだろう。

求めているのは、
「悔やまない心」や
「燃えつきる感じ」。

人生の葛藤や迷い、そしてそれを
乗り越えていくために、
最後は自分の決断を信じる信念。

自分の本当の気持ちと向き合うことが出来る
この曲は、リスナーに困難に立ち向かう力や
自己成長の機会を与えてくれるだろう。

Liar! Liar! / ストレスが強い

23rd Single
(Release : 1997.10.08)

サウンド、歌詞の内容ともに、
エネルギッシュで攻撃的な
ロックナンバー。

イントロから繰り出されるリフは、
ハードで切れ味のあり、低音域を効かせ
攻撃的なアプローチを際立たせている。

ギター主導のロックサウンドは、
リスナーに強いインパクトを与えている。

また稲葉さんのボーカルは、
強烈なアタックで言葉を放ち、
怒りや拒絶を直接的に伝える表現力を
最大限に引き出しており、楽曲の持つ
メッセージを強力に伝えてくれる。

この曲は、偽りや嘘に対する
怒りや不信感がテーマになっている。

この曲のAメロは、そんな裏切りや
不信感が象徴的に表現されている。

"まっ黄色いシャツ着ちゃって
歌い出しそうな表情さらして
ダンナと仲良く腕組んで 
道横切ってんのはオマエだろう"

「まっ黄色いシャツ」や
「歌い出しそうな表情」と、
表面的には明るく楽しそうに
振る舞っている「オマエ」。

さらに「ダンナと仲良く腕組んで」
というフレーズでは、二人が親密な
関係にあることが描写されている。

主人公にとって、その親密さが
自分を欺いていたのだと感じる
裏切り行為なのだろう。

「オマエだろう」と、相手を直接指摘
しているフレーズでは、裏切りや嘘に対する
強い憤りが表現されている。

Bメロでは、自分の感情が抑えられず、
どうにもならない状況に苦しんでいる。
そんな様子が表現されている。

"つっこんじゃうぞ アクセルべったり踏んで
大渋滞のせいじゃない こんなひどい頭痛
どこまでも 追い詰めても むなしいだけ"

ブレーキから足を離して、一気に
アクセルを踏み込みたくほどの
感情の爆発と焦燥感。

精神的なストレスや苦しみ。

しかし、その嘘や裏切りに対して
追及を続けても、何も解決はなしない。

結局得られるのは空しさだけだという
無力感が表現されている。

そして最後のサビ。
嘘と真実、そしてそれに対する複雑な感情が
描かれている。

"You,liar,liar もう信じられないや"
なんてスッパイんだ オトナのパラダイス
完全な芝居で 信じさせてよ
ウソなどないと 思いこませてくれ
Oh,liar,liar だれもがliar
愛する人が ハッピーになりゃそれでいいや"

理想と現実のギャップ。
楽園のような幻想と甘くない現実。
相手の嘘や偽りを認識していながらも、
それでも完全に信じたいという複雑な感情。

現実に対する逃避や、嘘でもその瞬間は
安らぎを感じたいという心理的な矛盾。

世の中の誰もが嘘をつくものだという
その現実を認め、最終的には自分が
どう感じるかよりも、愛する人が
幸せであることが重要だという
結論に達している。

そして、この曲の最後は、
このフレーズで締めくくられている。

"Baby,do you want the truth?"

本当のことを知りたいのか?と問いかける
このフレーズには、リスナーが現実に対して、
どれだけ真実を求めているかを試すような
ニュアンスが含まれている。

真実を受け入れる準備や覚悟。
真実を望むことが必ずしも
幸せにつながらないという複雑な状況。

嘘に満ちた関係や状況の中で、
真実を求めることが必ずしも
簡単ではないことを示唆しており、
その背後にある感情的な緊張感を
表現している。

松本さん、稲葉さんのエネルギー全開の
この曲は、感情を爆発させたい時や、
ストレスを発散したいとき、
また感情的な葛藤や、複雑な心境に
共感できる人にとって、歌詞が心に刺さる
おすすめのナンバーだ。

ハピネス / 心が休まる

B'zファンのなかでも人気のバラード。

この曲のテーマは、
幸せの本質とその発見。

歌詞では、自分の中や身近なところにある
幸せに気づくことの重要性が描かれている。

稲葉さんのボーカルは、感情を込めつつも
過度に力強さを押し出さず、
温かみのある声色で歌われている。

また松本さんのギターは、柔らかく
ナチュラルな音色のアコースティック
ギターが前面に出ているのが印象的だ。

装飾的なリフやソロは控えめで、
あくまでサポートとして機能しており、
ギター自体が、この曲のメッセージ性を
際立たせるようなアプローチとなっている。
曲全体のバランスを大切にする
松本さんのスタイルが表現されている。

2番のAメロでは、結果として
他の人を傷つけてしまうという
ジレンマや葛藤が表現されている。

"いつも うまくやろうと すればするほど
ひとを 傷つけてるよ"

善意で物事を進めようとしても、
必ずしもそれが他人にとって
良い結果をもたらすわけではない
という現実。

自分が最善だと思う行動が、
時には他者に負担をかけたり、
誤解を生んでしまう。

2番のBメロでは、相手の涙を通して
自分の内面の状態に気づく瞬間が
描かれている。

"君が流した涙の粒に はっきりうつる
荒れはてた 僕の心"

この表現は、非常に象徴的で、
深い感情の繋がりや自己反省へと
繋がっていく。

自分が抱える心の問題や未熟さが、
相手にまで影響を及ぼしていること。

そしてそれほどまでに、自分のことを
想ってくれていることに対して、
相手への共感や理解が深まる瞬間。

そして2番のサビでは、「君」との
真摯な向き合い方や、その存在の
重要性が表現されている。

"まっすぐ見つめよう ちゃかすのもやめよう
君だけが僕に勇気をくれる
大切なことを 易しい言葉で
ささやいてくれる"

軽率な行動や言葉を慎むことで、
相手との関係を大切にし、
誠実で真摯な態度を取る決意。

「君」の存在が自分にとって、
特別な支えであること。

人生における大切なことを、
優しく分かりやすい言葉と
声で伝えてくれること。

内面的な成長や自己理解を通じて
感じる心の平穏や幸福感。

それは、特別なイベントや、
大きな成功から得られるものではない。

日々の生活の中にある温かい瞬間や、
愛と支え合いの中で感じられる
持続的な幸福感こそ、「ハピネス」
なのだろう。

この曲は、自分を見つめ直す
きっかけをくれる。

自分の感情に対して反省している人、
あるいは自己嫌悪を感じている人。

大切な人に感謝を抱いている人や、
誰かに支えられていると感じている人。

自己成長や自己受容、
そして、愛情や感謝。

穏やかで癒される感覚で
リスナーを包んでくれる、
そんなナンバーだ。

FIREBALL / 興奮状態

21st Single
(Release : 1997.03.05)

"魂に火をつけろ"

この曲のシンプルなメッセージ、
サウンド全体が持つ爆発的な力が、
前に進むための原動力となる。

過去を振り切って新しい道を
切り開いていける、そんな感覚を
リスナーに与えてくれる。

打ち込みの音を一切使用せず、
ギター、ベース、ドラムのみという
シンプルな構成ながら、エネルギッシュで
攻撃的なサウンドを作り出し、全体的に
パワーと勢いを感じるハードロックな
ナンバーだ。

ベースは松本さんが演奏しており、
適度な歪みが加えられたサウンドと、
動きのあるベースラインが、
推進力のあるリズムを作り出し、
楽曲のヘヴィさと、ダイナミックな
音作りを支えている。

稲葉さんのボーカルも、力強さと
エネルギーに溢れている。
特にサビやハイライト部分では、
クリアで力強い高音域の歌声が、
楽曲のハードで疾走感のある
サウンドに対して負けることなく
響き渡っている。

サビでは、迷いや不安を振り払って、
夢や本当の自分に向かって進む姿勢が
歌われている。

"魂に火をつけろ
まっ青に こおりついちゃう前に
My soul is flyin' like a fireball
クズのような 迷いに灰になれ
飛んでゆける 空を燃やしながら
夢のもとへ そして自分のもとへ"

冷たく、無感覚になってしまい、
自分の感情や意志が消えてしまう前に
行動を起こすことが重要だ。

一度でも諦めてしまえば、
それはきっと癖になり、
もう行動を起こすことは
出来なくなってしまうかもしれない。

要は、体が動くか動かないか。
必要なのは努力じゃない。
大事なのは方向性だ。

夢のもと、本来の自分へと続く道、
正しい方向に進んでいると感じるなら、
体は前進するために、きっと
動いてくれる。

燃え盛る情熱と魂を持って、
積極的に、攻撃的に前進していく。

迷いや不安、困難な状況。
心を奮い立たせて、それらに
立ち向かっていく自分を、
鼓舞したい瞬間に、強力な
エネルギー源となるナンバーだ。

ぜひとも聴いてみてほしい。

Do me / 誇りに思う

タイトルの「Do me」は、直訳すると
「私にして」というような形になるが、
実際には、歌詞の文脈に応じて、
「私にアクションを起こして」といった、
やや挑発的で情熱的な意味が込められている。

抑えきれない衝動や、情熱的な感情を
相手に対して強く求める気持ちが描かれている。

そんな感情を、オープニングから登場する
ブラスセクションが、軽やかに明るく、
耳に残るキャッチーさで華やかさで彩り、
松本さんのギターが、グルーヴ感溢れた
軽快なサウンドで、一気に盛り上げてくれる。

また、稲葉さんの遊び心のあるボーカルが、
曲全体の明るさや軽快さを強調し、
サウンドの中に明るいエネルギーを
生み出している。

サビでは、相手に全力で自分に向き合ってほしい、
ありのままを自分にぶつけてほしいという
相手への強い愛情と、熱い思いが歌われている。

"Do me, do me 世界にひとつのスペシャル
(君のスペシャル)
Do me, do me ぶつけてちょうだい ボクに
手かげんは無用だ baby
愛しい人よ 僕は君の一番のファンだから"

「君」が自分にとって他に代わりのない
最高の存在であること。

だからこそ、飾らず、真剣に向き合いたい
という強い思い。

「君の一番のファン」というフレーズは、
相手を無条件に愛し、支えることを約束
している。

そうしてはじめて、二人の関係が他には
ないほど特別になり、他者では得られない
感情的なつながりが生まれる。

この曲の最後には、相手に対する
深い信頼や尊敬。
また、自分に自信を持ってもらいたい
という気持ちがシンプルなフレーズで
表現されている。

"君がスゴイってこと僕は知ってるぜ"

単に表面的な褒め言葉ではない。
「が」という主語を強調する助詞を用いて、
他者との比較や状況の中で、特に君が
際立っているという感覚を伝えている。

「君」をよく知っているからこそ、
「君はスゴイ」ではない。
「君が、君こそがスゴイんだ」と、
その素晴らしさに焦点を当てる
スペシャルな愛情を表現している。

感情を隠さずストレートに伝える
この曲は、ハードロックとポップの
キャッチーさのバランスがとれた
明るいサウンドで、聞く人に
前向きなエネルギーを与えてくれる。

自分に正直になり、愛する人に
感情を思い切りぶつける。
このシンプルさが、悩みを抱え、
何か気持ちを押し込めたり、
自分を抑え込んでいる状況に対して、
解放感や自己表現の大切さを
教えてくれるだろう。

泣いて 泣いて 泣きやんだら / 愛情のある

相手の感情を無理にコントロールせず、
相手が自分のペースで感情を解放し、
その心に寄り添う姿勢が歌われた
B'zの名曲バラードだ。

ドラマチックな展開を持たず、
日常的な出来事を通じて、
その関係が深まっていく。

日常の中で相手を支えたり、
相手の感情に寄り添ったりすることで、
少しずつ信頼や絆が築かれていく。

そんな現実の人間関係の繊細な
描写が、心温まるメッセージとして
リスナーの胸に響くのだろう。

歌詞の世界観に焦点を当てるような
バランスで構成されたシンプルで
メロディアスなアレンジ。
各音に余韻を持たせ、音と音の間に
空間を感じさせるような演奏が
魅力的なバラードだ。

Aメロでは、「あなた」が過剰に
自分を追い詰めている状況に対し、
その感情を理解し、寄り添うシーンが
描かれている。

"そんなにせめないで
あなたが悪いわけじゃない
一人じゃないんだから
心こすれあい
血がにじむことだってたまにあるでしょう"

人間関係において、その過程で避けられない、
感情的な衝突や摩擦が生まれることがある。
互いの弱さや違いに触れ、擦れることで、
そこから心に痛みが生じる。

「あなたが悪いわけじゃない」
それは人間関係の自然な一面だ。

サビでは、「あなた」が心の中に
溜まっていた感情を解放し、
少しずつ心の傷が癒えていく過程に
寄り添いながら、前向きな気持ちに
なれるように見守るシーンが
描かれている。

"泣いて 泣いて またいつか泣きやんだら
小さな胸をはってもいいじゃないか
どうやったて 毎日は過ぎるし
くやしさ 少ない方がいい"

「小さな胸をはって」という表現は、
大きな成果がなくてもいい、
立派な振る舞いでなくともいい、
完璧である必要はなく、どんな小さな前進でも、
それを自分で認め、肯定的に捉えることの
重要性を伝えている。

後悔やくやしさは、心に重くのしかかる感情だ。
時間は止まることなく進んでいく。
いくら願っても過去に戻ることは出来ない。

今できることやこれからの可能性に
目を向けることで、そのくやしさを
軽減することができるはずだ。

最後のサビでは、相手に対する優しさと
気遣いを含みながらも、それが重くならない
よう、柔らかなメッセージを伝えている。

"泣いて 泣いて またいつか泣きやんだら
どこか おいしいもの食べに行きましょうか
これは おせっかいか恋の告白なのか?
ねえ あなた
都合いいように とってくれていいよ
歌ってしまうんだ どうしても
うるさく思わないでよね"

食事に誘うという、日常的な行為が、
これまでの感情的な背景によって、
より鮮明な輝きをもって響いている。

その誘いの意味については、自分の意図を
相手に無理に伝えようとはせず、
「あなた」が最も心地よく感じる感情で、
受け止めて欲しいという優しさを見せている。

相手への気持ちが自然にあふれ出てしまう、
そんな状況を「歌」と表現し、その歌が
聴いてくれる「あなた」にとって
重荷にならないことを心配しながらも、
自分の自然な感情を、優しく届けている。

この穏やかなラブソングは、きっと
多くのリスナーに、癒しと安心感、
そして、その心に温かさを届けてくれる。

CAT / うろたえる

自由で本能的な生き方や、
欲望のままに行動する姿。

そして、ときには自分に有利に
はたらく行動を取り、相手の関心を
引くために意図的に距離を取ったり、
つかず離れずの態度を保つなど、
主人公を翻弄するような振る舞いを
見せる。

そんな自由でミステリアスな存在に
惹かれつつも、その距離感に戸惑う
主人公の感情が表現されている。

イントロのシンセサイザーの音色は、
そのミステリアスなイメージを連想させ、
「CAT」の人物像を音楽的に表現することで、
曲全体のムードを作り出している。

稲葉さんのボーカルのアプローチは、
主人公の感情の変化を見事に描写している。
Aメロでは、声が抑えられ、冷静で
客観的なトーンが強調されている。
一方でBメロからサビに入ると、
感情が高ぶり、相手に対する抑えきれない
欲望や苛立ちが溢れ出している。

曲の最後には、松本さんのギターから
猫の鳴き声を連想させるサウンドが
聞こえてくる。

イントロから最後まで、「CAT」の
テーマに沿ったアレンジが、リスナーを
より深くこの曲の世界観に引き込んでいく。

Aメロは、気まぐれで自由奔放な
女性の性格を描写している。

"声もかけずに 出ていったきり
夜から朝へさまよう
気にくわないnewsにゃ 爪をたて
やかましい街へと消える"

自分を残し、騒がしい場所や
刺激的な環境へと消えていく彼女。

そのことに苛立ちを抱きつつも、
彼女を手放したくないという思い。

Bメロでは、その挑発的な態度で
逆に主人公の執着や関心をかき立てる。

"流される人はダサいと笑い
さめた瞳 なれた手つき 僕をナメてる"

自分の意見や考えを持たずに
他人に流される人々を見下す。

「なれた手つき」は、彼女が過去に
同じような経験を重ねてきており、
男性に対しても簡単に気持ちを
揺らさない、流されない、
そんな芯の強さがうかがえる。

ナメられていると感じながらも、
「さめた瞳」から目が離せない。
その抗いがたい魅力に、
心をかき乱される感情が描かれている。

サビでは、彼女の自由奔放な
生き方を受け入れつつも、
最後には自分のもとに戻って
きてほしいという願いが
込められている。

"いってらっしゃい すきなとこへ
思いどおりにかけまわるがいい
夜毎 ニャオニャオ うさをはらして
ミルク色の夢をごらんよ そして僕に戻れ"

「ミルク色の夢」は、彼女が求める
理想の安らぎや充足感だろう。

自由や刺激を追い求める日常の中で、
いつか安らぎを求める日が来たときに、
たどり着く場所は、自分であってほしい、
そんな願いが込められている。

手の届かない存在に対する
切ない愛情と葛藤。
複雑で苦しい愛のかたちの世界観を
ぜひ体験してもらいたい。

だったらあげちゃえよ / 生き生きとした

手放すことで得られる解放感や、
前向きな視点が歌われている。

ポジティブなエネルギーに溢れた
ロックナンバーだ。

オープニングは、軽快なピアノの
メロディから始まる。
リズミカルな弾き方がジャズのフィールを
感じさせ、イントロに独特のスウィング感を
与えている。

その後、ドラムのフィルで一気に
バンドサウンドが加わるダイナミックな
構成になっており、これから展開する
ストーリーへの期待感を生み出している。

最後のサビでは、過去の執着や未練を
振り切って、新しい自分として生きる
力強いメッセージが表現されている。

"だったらあげちゃえよ 豪勢にゆけ
どんなにすがりついても
過去に戻る場所なんてないぜ
錆びたリング にじむインク 手紙は燃やせ
裏の林に投げたら はなやいだ街の中走れ"

思い出の象徴である「錆びたリング」や
「インクのにじんだ手紙」。
それらをどれだけ眺めていても
過去は戻ってこない。

もし手放すことを決めたなら、
堂々と、惜しみなく次のステップを
目指していく。

"だったら捨てちゃえよ 太っ腹でゆけ
ゴミに日に出してしまえ
ま新しいハートになれるぜ
不安だろう 恐いだろう でもね それがいい
いつまでも消えないものが
いつの日かかならずや手に入るだろう"

心の荷物を捨てるように自分を解放する。
過去を手放し、未知の未来に向かうことは
不安や恐れを伴う。
それでも、その先にはきっと、
新しい可能性が待っている。

そうして、心に余裕が生まれると、
物や思い出に対する執着は薄れ、
自分の内面や新たな人間関係に
価値を見出すようになる。

いつまでも消えない、
本当に価値あるものは、
きっと形には残らないものだろう。

過去への執着や不安を抱えながらも
新しい道に踏み出したいと感じている、
そんな人に、おすすめのナンバーだ。
心を軽くし、ポジティブなエネルギーを
与えてくれるはずだ。

Shower / 思いにふける

大切な人との別れ。

もう一度会いたいという切実な願いと、
時間が過ぎて叶わなくなってしまった
後悔や自責の念。

とめどなく降り注ぐ記憶、情景の
美しさに包まれながら、過去と対話し、
現実を受け入れる、その切実な
心情の過程が、美しいサウンドで
紡がれた名曲バラードだ。

「Shower」のサウンドは、
シンプルでクリーンな音色が際立ち、
楽曲の繊細で、切ない雰囲気を
引き立てている。

感傷的な気持ちに寄り添うように
音の余韻を残しながら、
淡々とした流れを保つことで、
楽曲全体が静けさの中に、
悲しみや優しさを浮かび
上がらせている。

2番のAメロでは、普段は何気なく
見過ごしてしまう風景が、
小雨によって美しく変わる瞬間を
捉えており、儚さと静けさを
描写している。

"アスファルトは銀色に光り
クツを脱いで歩いて見れば
優しく僕を叱りながら
小さな粒がふりそそぐ"

「優しく僕を叱りながら」という
フレーズは、穏やかで静かに
自己を振り返るきっかけを
与えてくれる、そんな自然の
側面を強調している。

2番のBメロは、稲葉さんの
ファルセットを織り交ぜた歌声が、
過去への強い思いが込められた感情を
より切なくリスナーに届けている。

"時間がね できたらね もう一度会いたいと
ウソじゃなく感じてた でも僕はおそかった"

その思いを実現する前に機会を
失ってしまった後悔。

時間が戻らないことへの痛切な感情。

そして、最後のサビでは、人生の儚さと
命の循環に対する思いが込められている。

"どうして人はいつか
はかなく消えてゆくんだろう
教えておくれ
命は夕陽に抱かれ 燃えながら 旅立ち 
また だれかを照らすよ"

命が尽きる時を夕陽が沈む瞬間に例え、
燃えるような輝きを残して去っていく、
そんな一瞬を描写している。

残された愛や思い出が生き続け、
その人の心に灯をともす。

愛する人が去った後もその影響が
続くことを美しく表現しており、
悲しみの中に希望や温かさを
感じさせる表現だ。

どんなに思っても、何度願っても、
もうその人に会うことはできない。
そんな心の苦しさを抱える人々に
この曲が届くことねがっている。

Calling / 至福

22nd Single
(Release : 1997.07.09)

この曲は、ロックからバラードへ、
そして再度ロックへ、という非常に
印象的な曲構成となっている。

ロックパート、バラードパートで
歌われる、それぞれの切実な思いと、
サウンドのコントラストが、
楽曲にドラマティックな起伏を生み出し、
リスナーに対して高揚感やカタルシスを
感じさせ、曲を聴き終えた後に、
深い感動と余韻を残す。

タイトルの「Calling」の意味は、
単なる言葉による「呼びかけ」ではない。
互いを必要とする運命的なつながりを
感じるからこそ届けることができる
「この声」のことなのだろう。

オープニングは、力強さと緊張感を
感じさせるエレキギターのリフから始まる。
そこにアコースティックギターのリフの
サウンドも加わることで、音の輪郭を
より鮮明に浮かび上がらせ、曲全体の
ドラマチックな雰囲気を、最初から
印象づけている。

イントロのリズムを刻むクラップ音は、
リズムの躍動感を強調し、体感的に
感情の高まりを予感させるような
雰囲気を作り出している。

そして、このクラップ音が細かく
リズムを刻んだ瞬間、この曲の
テンションは一気に跳ね上がる。

稲葉さんのボーカル、松本さんのギターが
極限まで感情的に響きわたるその迫力が、
リスナーの胸を打つ。

"この声が聞こえるかい
wow wow wow wow
今なら聞こえるかい どうか苦しまないで"

オープニングの、このサビは、
切実で、どこか焦燥感を感じさせる。

相手を思い届けようとする強い願いが、
本当に聞こえているのか。
確信のないまま、それでも叫び続けている、
そんな切ない響きが感じられる。

そして、曲はバラードパートへと移行する。

ピアノの音色が持つ温かみに加え、
ストリングスが調和されることで、
サウンドが壮大に広がっていく。
そのエモーショナルな演出が、
リスナーに感情的な安らぎと共感を
もたらしている。

Aメロでは、過ぎ去った日々が持つ
「重さ」について歌われる。

"あっという間 時間は積もり
何も見えなくなりそう
街の色も変わりつづける中で
なんだか今も一緒にいる"

これまでの経験や感情は濃縮され、
視界を覆うほどに重なった年月。

時間の流れとともに周囲の環境など、
目に見えるものが変わっていくことで、
「なんだか今も一緒にいる」そんな
「きみ」との変わらない心の中の
つながりが強調され、切なくも
温かい思いが込められている。

ブッリッジパートでは、ふたりの
シンプルで純粋な関係が歌われる。

"どれだけ離れ 顔が見えなくとも
互いに忘れないのは
必要とし 必要とされていること
それがすべて 他には何もない"

他に何もいらないと言い切ることで、
互いを求め合う気持ちそのものの、
本質的な愛情が、純粋で、
強い結びつきであることが
表現されている。

バラードパートの最後のサビでは、
言葉を超えた心の通い合いや、
約束や形式に縛られることのない
深い信頼が描かれている。

"きみといるとき ぼくはぼくになれる
そういう気がする
言葉よりはやく わかりあえる
輝く瞬間 あざやかに
いままでもこれからも
約束などすることはないだろう
誰にも真似できない 同じ夢を見よう
Can you hear the calling?"

「Can you hear the calling?」は
心の奥底からの「運命的なつながり」を
感じているかどうかを問う言葉だ。

そして、再度、ロックパートに移行し、
オープニングと同じ言葉を叫ぶ。

"この声が聞こえるかい
wow wow wow wow
今なら聞こえるかい どうか苦しまないで"

これまでの曲を通して感情が高まったことで、
このフレーズに、より確信に満ちた響きが
加わっている。
この「聞こえるかい」という呼びかけは、
もはや不安や焦りではなく、
つながりを確信した温かかみのある
感情的な呼びかけに変わっている。
ふたりの絆が曲の流れの中で
強まっていることを感じさせ、
「この声」が届き、「きみ」が
その思いを受け取った、そんな
充実感で満たされている。

この構成によって、曲全体を通じた感情の
成長が強く感じられ、リスナーに深い余韻と
圧倒的な感動を残してくれる。

心の奥底から湧き上がる力強い感情と共に
音楽を通して感情が浄化される体験を
させてくれる。

最後にぜひ、こちらのスタジオライブの
映像もご覧になってほしい。
曲同様、B'zの色褪せない輝きを
感じることが出来る。

「I will survive」