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「これまでの自分」という壁を越える
自分にとって苦しいと予測される未来を選択して行動する。
暗さや後悔で溢れながらも、それでも力強く、一歩を踏み出す。
その別れに告げる「ありがとう」 という言葉。たとえそれがつらく、悲しい、そんな別れであったとしても。
この曲は、その最初の一歩を踏み出せずにいる人に寄り添い、その勇気を与えてくれる。
Release:2004.09.01

※本記事では、B’zのシングル『ARIGATO』に収録された各楽曲について、歌詞の一部を引用しながら、その表現やメッセージについて考察しています。引用にあたっては、著作権法第32条に基づき、正当な範囲での引用を行っております。
ARIGATO / 精力的
アコースティックの静かなギターサウンドから、エモーショナルなギターサウンドへと繋がれていく。そして力強いドラムの音が、1歩ずつ踏みしめながら、前へと進んでいく姿を、 鮮明に浮かびあがらせている。
“いま踏み出そう ぐっと前に踏み出そう
優しさがスブリ胸につき刺さる
Now it’s time to go.
Now it’s time to glow.
痛くてもせつなくても このままいこう”
歩きながら、ふと蘇るのは「君」の優しさ。今になって、あのとき抱きしめることもせず、何も出来なかった後悔で胸は痛くなる。
“歩き続けた先に 見たいのは
想像を越える風と光
そこに誰もいなくても”
辿り着きたい場所は、想像すらできない景色。誰が待ってくれているわけでもない。
そしてこの曲のテンションが最高潮に達したところで歌われる言葉。
“ありがとう”
感謝の気持ちがくり返し歌われる。このフレーズでは、はっきりとした自信が表現されている。
けっして逃げ出すわけじゃない。これまでの経験に「ありがとう」と伝えることで、堂々と、前向きにその歩みを進めていることがわかる。
良いことばかりじゃなかったはずだ。つらいことも、イヤなこともあっただろう。それでも、自分を成長させてくれたことに対して、「ありがとう」と伝える。
なかなか出来ることじゃない。言い訳を探したりせず、そんな自分を正当化することのない、シンプルな「ありがとう」という言葉。まさにタイトルにふさわしい言葉だ。
“星は消え 影も消える
それでもいい”
最後はこのフレーズが、アコースティックギターの弾きかたりで歌われて終わる。
暗闇の中へと進んでいく主人公の姿を見送った後、その余韻がリスナーを包みこむ。
輝く運命はその手の中に / 穏やか
未来は、その手で掴みとるもの。ではどこに手を伸ばせばいいのか。それは誰も教えてくれない。
“手帳の写真を一枚とりだして 灰皿に破って捨てたら笑えた”
その写真にうつされた何かにとらわれて自分。その手でそれを破ってみると、そのあっけなさに笑えてしまう。
あいまいな空模様のように、漠然とした不安の正体は、案外たいしたことのないものなのかもしれない。
“もしも未来が闇の中で 眠っているなら
ひとり立ち上がって
光をあてながら彷徨う 勇気があるのか”
心に灯した火は、あたり一面を照らしてはくれない。手の届く距離でさえ、きっと暗闇に覆われている。彷徨い、悲しく、手探りでも泣きながらでも歩く。
きっと、その行動自体がもう「輝く運命」なのだろう。
どんな暗い現状だって、その先を見据えれば、「輝く運命はその手の中に」 存在しているはずだ。
もうはなさない / うれしい
やる気に溢れたエネルギッシュなロックナンバー。
“人の目ばっか 気になってる
この僕が 卑屈じゃないのは
まぶしいほど 今を生きる
君がいるからなんだ やっとわかったぞ”
このフレーズでは、その気付きに喜ぶ感情が、表現されている。
“正しいと信じてたこと
まとめてひっくり返すよ”
自分の今までの常識や価値観に、まるでパイルドライバーをかけるように、派手なfeelingがサビへとつづいていく。
“もうはなさない 君のことを
はずかしいよ んなこといって
でもかまうまい ああ 今ならね
どんな歌でもいいよ 歌ってあげる
いつの時代もときめきはフリーウェイ”
正しいと信じていたことに、 自分の意志は宿っているのか。もしそうではないなら、ぜひこの曲を聴いてみてほしい。きっと新しい価値観をもつ勇気を与えてくれる。
Now it’s time to go.
Now it’s time to glow.

※本記事において引用している歌詞は、すべて松本孝弘/稲葉浩志によるB’zのシングル『ARIGATO』に収録された楽曲からの一部抜粋です。著作権は各著作権者に帰属しており、当サイトは正当な引用のもとでこれを掲載しています。著作権に配慮して歌詞全文の掲載は行っておりません。